ながさわ「2014年シーズンのスワローズを一冊の本にすることはできましたが、チームは最下位。『ここで終わるわけにはいかない!』という思いがありました。それと、2010年から5年以上この活動を続けてきたことで、僕自身を応援してくれる人がすごく増えました。そういう声をいただく中で、『本ができたので、じゃあ辞めます』とはとても言えませんでした。それに、もし優勝し、胴上げで終わることができれば、『僕のイラストが応援になった』を証明することができるわけですから」。
その決意通り、6年目にしてようやく悲願の「胴上げ」を描くことができたながさわ氏。その胴上げシーンとともに昨季のハイライトにあげたのが、シーズン中盤73試合目の「館山昌平復活登板」だった。
ながさわ「館山はほぼ2年間投げられませんでしたが、ヤクルトファンはずっと彼の復帰を心待ちにしていました。リバビリする姿はずっと追いかけてきたし、その姿に自分を投影するファンも多かったと思います。その館山が復帰し、本人には勝ち星はつかなかったけれど、チームに勝ちがついた。球場全体に『館山を勝たせたい』という気持ちが充満していました。あの時から、チームがひとつになった気がしています」。
今回、2冊目の本という形にすることができたことで「6年間の活動をようやく終わることができるんじゃないかなと思います」と語るながさわ氏。そして、「僕に続く人が出て来てほしいんです」と言葉を続けた。
ながさわ「僕がイラストによってチームを応援し続けてきたように、『自分ならどんなことでチームの戦力になれるのか』を考えるキッカケにしてほしいんです。必ず答えは出てくると思います。そして、ファン一人一人がそんな風に思える環境ができあがれば、野球界は絶対に面白くなると思うんです」。
ながさわ氏はプロ野球、スワローズという球団で願いを成就した。だが、広い意味でいえば、それはプロ野球じゃなくてもいいはずだ。
ながさわ「どんな世界でも『自分だったら何ができるのか』を考えられる状況が作れるんだったら、世の中はもっと素晴らしい世界になると思います」。
「だから……」と、ながさわ氏は語気を強めた。
ながさわ「スワローズは、僕を選手として迎え入れてくださいっ! 球団として放っといていんですか? だって、優勝したぜ、と(笑)。もし、『うちでやってみないか』という球団があれば、ぜひ、話を聞いてみたいですね」
まさかの移籍表明も飛び出したながさわ氏。まずは来月、2月1日からの春季キャンプは現地に赴くという。2016年シーズン、「ながさわ選手」はどんな活躍を見せてくれるのだろうか。
◆『プロ野球画報2015 東京ヤクルトスワローズ全試合』(雷鳥社)
クライマックスシリーズ、日本シリーズを含む全152試合を著者のその日の出来事、心情を綴った文章とともに1試合1枚のイラストで掲載。また、“絵を描く”という独自のスタイルでスワローズとともに戦い続けた、ながさわたかひろの6年間を振り返る。巻末には2015年のスワローズ対戦カレンダー、選手成績をはじめとする記録集も付属。スワローズファンにとっては永久保存版となる一冊。