昨季の山口は11勝5敗の好成績を残し、DeNAのエース、そして選手会長として活躍。DeNAファンの誰もが今季も期待していた。しかし、シーズン終了後、10月31日の全体ミーティングを欠席。DeNAは好条件で引き止めるも、噂されていた通り、巨人へのFA移籍を決断した。
2005年の高校生ドラフト1巡目で横浜に入団。横浜、DeNAに在籍した11年間では先発、中継ぎ、抑えとすべての役回りをこなしてきた。というより「適材適所」を模索し、行き来してきたという言い方の方が合っているかもしれない。
2009年に150キロを超えるストレートと曲がりの大きいフォークを武器にクローザーとして頭角を現し、2010年には30セーブ、2011年には34セーブをマーク。2010年と2011年にはオールスターゲームにも出場した。
しかし、2013年は不調で2軍落ちするなど不本意なシーズンを送る。そして、2014年に先発に転向。自身初の無四球完封勝利を含む8勝を挙げた。2015年は不安定なピッチングで精彩を欠いたが、2016年は前述の通り11勝。DeNAのエースとして頼られる存在となった。
これまで山口のウイークポイントのひとつとして、メンタルの弱さが指摘されてきた。1点もやれないピンチで登板することも多いクローザーには、何よりも「メンタルの強さ」が求められる。
しかし、クローザー時代の山口は、リードしている場面でも四死球や暴投で自ら危機的状況を作り出してしまう「劇場型クローザー」として見られていた。
言うまでもなく巨人はもっともメディアから注目されるチームだ。当然、期待される選手へのプレッシャーも大きい。
待ちに待った1軍合流が目の前に迫るなか、先日の2軍での登板後、山口は「怖さなく打者と対戦できた」とのコメントを残した。それは2ケタ勝利を挙げた自信の現れなのか。それとも不安含みのコメントなのか。巨人のユニフォームをまとった山口の1軍登板は果たして?
一方、山口の人的補償でDeNAに移った平良拳太郎は2試合に先発し、1勝1敗。まずまずのスタートを切った。エースの穴を埋める期待株として奮闘。チームメイトからも熱くサポートされている。
DeNA時代の山口は、力士だった父を持つことから「どすこい」のあだ名で親しまれた。復活登板では、豪快なピッチングで打者を次々になぎ倒していく、山口本来の持ち味が巨人でも発揮されることを期待したい。
文=元井靖行(もとい・やすゆき)