佐々木朗希(大船渡高)や奥川恭伸(星稜高)に大きな注目が集まった今年のドラフト会議。1位入札からのくじ引きの末、佐々木はロッテ、奥川はヤクルトが交渉権を獲得し、プロとしての第一歩を踏み出すことになった。
ただ華々しく「サクラサク」となった選手がいる一方で、“指名漏れ”という憂き目にあった選手も存在する。今回は悔しい涙を流した選手を紹介していきたい。
まず高校生では林優樹(近江高)が挙がるだろう。昨夏の甲子園では2年生ながら吉田輝星(日本ハム)がエースの金足農高と熱戦を演じ、敗れはしたものの「近江に林あり」と強い印象を残した。
今年の夏も滋賀大会で、4試合26回で30奪三振無失点という圧巻の投球を披露。優勝候補として乗り込んだ甲子園では一回戦負けとなったが、侍ジャパンU-18代表に選出されるなど確かな成長を感じさせていただけに、プロでその姿を見られないのは残念のひと言。
次なるステージは社会人野球の西濃運輸。もともと社会人野球志望だっただけに、3年でどんな成長を遂げているのか楽しみにしたい。
昨年は松本航(西武)、東妻勇輔(ロッテ)と2人のドラフト上位投手を輩出した日本体育大。今年は吉田大喜がヤクルトに2位指名されたことで、まだまだ風は吹いていると思われた……。
しかし吉田と両輪を担って、春の首都大学リーグで5戦無敗という結果を出した北山比呂の名前はどの球団の指名一覧になかった。
最速154キロのストレートは威力十分。それだけにプロのマウンドに上がってほしかったが、指名漏れとなってしまった。進路はまだ報じられていないが、次のドラフトで名前が読み上げられても不思議ではない実力を持っている。
176センチ102キロの体躯で、アマチュア球界を代表する長距離砲として名を馳せている片山勢三(パナソニック)。中村剛也、山川穂高(ともに西武)の“ぽっちゃり系スラッガー”の系譜を継ぐスラッガーとしてプロ入りが期待されたが、今年の指名は勝ち取れなかった。
強打者にも守備力を要求する日本のプロ野球への対策だったのか、今年は、昨年までのDHメインから三塁に挑戦。しかし、その影響か打撃の調子が上がらず、スカウトへのアピールが物足りなくなってしまったのかもしれない。
今年で24歳、もう若くはないが、同じ巨漢選手の井上晴哉(ロッテ)が29歳で花開いたと思えばまだこれから。「悔しさをバネに」とは常套句だが、プロのお立ち台でそのセリフが聞ける日が来るのを心待ちにしたい。
「有力選手がどの球団に入るのか」というドラマ性の大きいドラフト。一方でよほど知名度や実力が抜けていない限り、チームの補強ポイントと合致していないと指名してもらえないという現実もある。
各球団は「若手が少ないから高校生指名」「即戦力がほしいから大学・社会人狙い」という補強戦略のもとに動くので、“指名されない=プロに指名される力がない”とは言い切れない。
確実にプロ野球選手になりたいなら、絶対に指名したくなるほどの力をつけるのがベスト。言うほど簡単なことではないが、今回紹介した3人はその域に達する可能性が十分に残っている。
数年後のドラフト会議で全員がドラフト上位を勝ち取ったら…と思うと、筆者の文字を打つ手もつい弾んでしまう。
文=森田真悟(もりた・しんご)