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【阪神】関本賢太郎と新井貴浩。一振りに懸ける男たちの集中力と生き様を見よ!

 阪神がもがき苦しんでいる。わずか2週間前まで首位争いを繰り広げていたのが嘘のような大失速で、あっという間に地力2位の芽もなくなってしまった。そして振り向けば4位・DeNAの足音が少しずつ大きくなる今日この頃。

 ピリッとしない投手陣以上に深刻なのが打撃陣の湿り具合だ。特に3番の鳥谷敬の不振(9月の月間打率.133)を筆頭に、打線が「線」にならないのがもどかしい。だからこそ、ひと振りで流れを変える力を持つ代打男、新井貴浩(37歳)と関本賢太郎(36歳)のバットに期待せずにはいられない。


◎2億円の代打男

 推定年俸2億円。にもかかわらず今季、代打での起用が多くなっているのが新井貴浩だ。昨年は140試合に出場し15本塁打、リーグ最多の犠牲フライ数(7本)を記録するなど、まだまだ老け込む年齢ではない。それだけに、本人としては「代打に甘んじている」という心境かもしれない。

 キャンプの時点ではこんなはずじゃなかった。キャンプ中の実戦形式の練習では11打数9安打、打率はなんと.818を記録し、和田監督が「キャンプMVP」に選出したほど。明らかに調整不足だった新外国人・ゴメスとの一塁レギュラー争いもリードしているはずだった。

 ところが、シーズンが始まってみればゴメスが球団新記録の「開幕から27試合連続出塁」をマークし、新井はすっかり代打専門に。もっとも、今季の本塁打はここまでたった3本、犠牲フライも1本だけ。今までレギュラーとして出続けることで結果を出してきた男は、「代打男」としてはまだまだ本領を発揮できていない。

 だからこそ思う。新井が一打席、一振りだけで結果を出せる集中力を身につければ、得点力不足に悩むチーム事情を解消する糸口になるはずなのだ。新井が変わることができれば、阪神も浮上のキッカケを掴むかもしれない。



◎「代打の神様」はチャンスメーカー

 そんな新井が今、一番見倣うべきは阪神の「代打の神様」の系譜を継ぐ男、関本賢太郎だろう。関本の成績でもっとも注視すべきはその驚異的な出塁率。昨季の出塁率は.415、今季もここまでの出塁率が.429と、試合を決める、というよりもチャンスメークを得意とするバッターだ。

 さらに今季7月13日の試合では巨人・澤村拓一のストレートを弾き返して代打逆転満塁ホームランを記録。「代打の神様」としての神通力にさらに磨きがかかってきた。

 実は関本、昨年まではセットアッパーやクローザーの速い球を苦手にしていた。そこで今季から打撃フォームを改造し、速い球にも差し込まれない打ち方を目指していた。あの代打満塁ホームランは、その成果を遺憾なく発揮した形なのだ。ベテランになっても変化を恐れない心が、プレッシャーのかかる代打という役回りを成立させているのではないだろうか。


 さて、9月14日の試合、代打で起用されたのは新井でも関本でもなく、西岡剛。そして西岡は期待に応えてタイムリー三塁打を記録した。そんな西岡は試合後のヒーローインタビューでこんなコメントを残している。

「関本さん、新井さんの大変さがすごくよくわかりました。あの場面は僕だから打てたかなと思いますね。関本さん、新井さんならシングルヒットでしょう」

 もちろんこれは、チームを愛するが故の、そして自分は足を生かしていきたいという西岡流のジョークだ。それでも、このコメントで奮起しなければ新井も関本も男じゃない。CS進出となる3位死守、そしてCSでの下克上を目指して、阪神の「代打男」たちの季節はまだまだこれからだ。
(今季の成績は9月14日試合終了時のもの)


■ライター・プロフィール
オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。「エキレビ!」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』(新紀元社)では構成を、『漫画・うんちくプロ野球』(メディアファクトリー新書)では監修とコラム執筆を担当している。ツイッター/@oguman1977

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