昨年、モイネロはキューバリーグで12勝を挙げ、今春のWBCでキューバ代表に選出。そのWBCでのピッチングが評価され、5月4日に育成契約でソフトバンクに入団した。
まだ21歳のモイネロは、5年契約での入団。じっくり育てるのかと思いきや、3軍で2試合、2軍で3試合の登板を経て、6月16日に支配下登録。6月27日に1軍で初登板を果たすと、7月2日に初勝利。7日には初ホールドを記録した。
現在、デビューから1カ月足らずで8試合に登板し、防御率1.64。春に発行された選手名鑑に載っていない投手だが、すでに戦力として活躍中なのだ。
150キロ超えのストレートと、スライダー、チェンジアップ、カーブなど多彩な変化球を持つモイネロ。7月12日の楽天戦では3回、23日のロッテ戦では2回2/3投げるなどロングリリーフでも結果を出しており、五十嵐亮太の離脱によりあっぷあっぷ状態の中継ぎ陣の救世主になりうる働きを見せている。
2015年のソフトバンクは、バリオスがプロ野球記録の17試合連続ホールドを記録。昨季はスアレスがセットアッパーとして活躍。そして、今季はモイネロが登場。モイネロはソフトバンクのスカウト力の高さをあらためて知らしめることとなった。
ちなみにモイネロとともに5月に入団したキューバ出身のコラスはまだ19歳。3軍で投手として3試合に登板、打者としても10試合に出場。野手では一塁、外野守備につき、二刀流選手としてプレーしている。
さて。モイネロに話を戻そう。先発陣は駒が足りているものの、中継ぎ陣に不安(特に左腕)を抱える今、首脳陣は勝利の方程式の一角にモイネロを入れたいと考えているのではないだろうか。
ロングリリーフをこなせるため、勝ちゲームでも負けゲームでも使える「便利な存在」にもなってしまう恐れもあるが、個人的には先発で使ってほしい。
先述の楽天戦では、3イニング目に入っても球速が落ちず、投げ終えた後も「まだ投げられますよ」と言わんばかりの飄々とした表情。その様を見ていると、「もっと長いイニングを投げさせてみると面白いのでは?」と思ってしまうのだ。
和田毅が離脱し、山田、大隣憲司が不甲斐ないピッチングを見せるなか、ひょっとして待望の「先発左腕」の枠に、すっぽりとモイネロが収まるのではと思うのだが、どうだろうか?
文=溝手孝司(みぞて・たかし)
札幌在住の広告代理店社長。北海道生まれ北海道育ちながらホークスファン歴40年。8月末には旭川スタルヒン球場での日本ハムvsソフトバンクの観戦が決定。スタルヒン球場を訪れるのはイチローフィーバーで沸いた1994年のオリックス戦以来。23年ぶりに行ってきます。