2018年12月20日、東京・丸の内の八重洲ブックセンター本店にて、『20年目の松坂世代』(竹書房)を上梓した上重聡(日本テレビアナウンサー)が出版記念トークイベントを行った。
1998年の甲子園、PL学園のエースとして松坂大輔ら逸材が揃った横浜と春夏2度に渡って死闘を演じた上重聡氏が、松坂大輔(中日)をはじめとした松坂世代の10人にインタビューを刊行。1冊の本としてまとめたということで、会場には多くの読者が詰めかけた。
今回は件のトークイベントの模様をお伝えしよう。
東京・八重洲ブックセンター本店の8階に設けられた特設会場。トークイベントは19時開始予定だったが、18時前から並ぶ参加者が現れるなど、あらためて“松坂世代”への注目度の高さが伝わってくる。
そのトークの前に、18時からは報道陣に向けた囲み取材とフォトセッションが行われた。時間ぴったりに控室から出てきた上重氏。集まった報道陣を前に「こういうことは初めてなので」と、テレビで見せる姿とは違う緊張の面持ちで登壇した。
この本を作ろうと思ったきっかけ、作っているときの苦労話など、報道陣から矢継ぎ早に質問が飛ぶなか、「協力してくれた選手たちの反応は」という質問に対して「まだ反応が……」と気を揉む様子も見せた。
しかし、インタビューした選手たちから「上重の思うように書いてもらっていい」と言われていたというエピソードを披露。同級生たちの言葉に支えられながら作り上げたことが伝わってくるようで、聞きながらうなずかずにはいられなかった。
報道陣の会見が終わると、いよいよ参加者を交えてのトークショー&撮影会がスタート。開場するやいなや、我先にとステージ前の席へ向かっていく参加者の姿を見ていると、あっという間に席が埋まり時間となった。
司会者とともに姿を表した上重氏が席につくと、会場の参加者は一斉にスマホのレンズを向けて撮影を始める。質問の返事に重なるように響くシャッター音。撮影禁止のイベントが多いなか、参加者の満足度も心なしか高いように思えた。
それぞれの選手について秘話を交えながら進めていく上重だったが、選手によって敬称を変えていたのが印象的だった。
高校時代から交流のある選手は「くん」、あまり接点がなさそうだった選手には「選手」。そのなかで楽天・平石洋介監督に対しては、小学6年生から高校まで一緒に過ごしてきた仲であることから敬称はなし。
松坂世代初の監督ということで敬いつつも、背景に流れる友情を感じさせる上重の対応に人情を覚えたのは、筆者だけではなかっただろう。
トークショーが終わったあとはサイン会と撮影会に移る。ファンと思しき女性が当時の高校野球雑誌を見せるなど、和気あいあいとした雰囲気でふれあいの時間が進んでいく。
参加者の年齢層は20代から80代までと幅広く、本当に松坂世代というものが世代を超えて愛されているということがよくわかったイベントだった。
筆者は松坂世代の2歳年下で、高校1年生のときに最上級生だった彼らを見て憧れを抱いたものだが、同じ時代を生きることができて幸せを感じている。
ただ「筆者ももう2年早く生まれて松坂世代だったら…」と、どうにもできないifを想像してしまった。きっと、うらやましさの裏返しだと思う。
文=森田真悟(もりた・しんご)