一本目の矢は、佐藤勇。2012年のドラフト5位で入団した4年目の左腕だ。
4月26日のロッテ戦でプロ初登板を果たすと、中継ぎを2回経て先発へ。楽天とロッテにKOされたものの、3回目の先発機会をものにして、見事プロ入り初勝利を挙げた。
2回に無死満塁のピンチを作ったが、三振、サードゴロ、三振で切り抜け、初先発の際にKOされた楽天を向こうに回して5回を無失点。最高のリベンジを果たすことができた。
福島県西白河郡西郷村で生まれた佐藤は、小学1年生の頃に父親を亡くして女手1人で育てられた。通っていた光南高校も、『ウィキペディア』の「出身者」の欄には佐藤の名前しかない。
母親と母校に向けて、一度に恩返しをした苦労人。これからも地元に吉報を届け続けてほしい。
二本目の矢は菊池雄星(写真)。あらためめて語る選手ではないが、楽天戦の2戦目に登板すると、7回を88球で抑えてみせた。
同じ左腕の後輩が前日に素晴らしい投球を披露していただけに、発奮するとは思ったが、見事に先輩のメンツを保った。
今季は開幕投手を任されるも、例年と変わらないピッチングを続けてきたが、5月に入って人が変わったかのような投球を見せている。
いよいよ本領発揮か。真価が問われる交流戦になりそうだ。
三本目の矢は高橋光成。今季は期待されていた開幕ローテ入りこそ叶わなかったが、徐々に調子を上げてきている。
その証拠が、楽天の3戦目で見せた完封劇。楽天打線を散発の3安打に封じ、12個もの内野ゴロを打たせた。三振は9個と惜しくも2ケタに届かなかったが、進化を感じさせる勝利となった。
またこの完封勝利には、現ヤンキースの田中将大以来の「高卒から2年連続」という肩書きもついてきた。こうなったらもう、名投手の道は約束されたも同然。
今季は岸孝之の離脱や十亀剣の不調など、実績のある先発投手に泣かされてきた西武。しかしここに来て、孝行息子が現れてくれた。
また、ここのところ西武は、若手野手は育つが投手が育たないと言われてきた。しかしこの3人には、その潮目すら変える力があると信じている。
それが叶った時、西武は再び「投手王国」という好景気に湧くはずだ。そして「黄金期」という名の、バブルが来ることを願って止まない。
文=森田真悟(もりた・しんご)