ドラフト候補選手の魅力をたっぷりとお伝えする「2016ドラフト候補怪物図鑑」。
今年のドラフト会議での上位指名が濃厚な目玉選手9名と、来年のドラフト会議で要注目の3名を4週間に渡って徹底解剖。新人ライターの山岸健人さんが、『野球太郎』持木秀仁編集長に根掘り葉掘り質問しまくります。
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今回は、最速152キロの剛球を武器に今夏の埼玉大会を37回無失点に抑え、甲子園3期連続出場を果たした左腕・高橋昂也投手(花咲徳栄)をピックアップ。高橋投手が醸す「ロマン」とは?
山岸:高橋投手の一番の魅力はどこでしょう?
持木:左投手で最速152キロのストレートを投げられることです。今年のセンバツでは球の勢いだけじゃない「考えたピッチング」をしようとしていましたが、今ひとつの結果に終わりました。そういうところを見ると、やはり勢いで押し切るスタイルが向いているピッチャーだと思います。
山岸:今夏の埼玉大会では37回を無失点。素晴らしいピッチングで花咲徳栄を甲子園へ導きましたね。
持木:はい。埼玉県大会のピッチングはすごかったです。ただ甲子園ではちょっと疲れが出てしまったようで……。
山岸:甲子園では“BIG 4”としてそうとう注目を浴びましたが、3回戦で作新学院に敗退。今ひとつ調子が上がらず、すごみを発揮できませんでした。
持木:残念でしたね。でも、個人的には、高校生のなかでは一番「剛球を投げるピッチャー」というイメージを抱いています。藤平尚真投手(横浜高)、寺島世輝投手(履正社)、今井達也投手(作新学院)もいいストレートを投げますが、高橋のストレート方が威力があると思います。
山岸:高橋投手は181センチ83キロ。がっちりした体型ですが、まだまだ大きくなりそうですか?
持木:まだ大きくなりそうです。体が丈夫そうですし、鍛え甲斐がある投手ですね。
山岸:伸びシロも十分と。では、剛球の一方で変化球はどうでしょうか?
持木:スライダー、カーブ、フォークを投げますが、とくに目を惹くのがフォークです。
山岸:フォークは武器になりそうですね。
持木:はい。左投手でフォークを投げる投手は珍しい。入るチームにもよりますが、うまく持ち味を発揮できれば、小笠原慎之介投手(現・中日)のように1年目から1軍で投げる可能性もあるんじゃないでしょうか。
山岸:本誌『野球太郎No.020 ドラフト直前大特集号』では、高橋投手の「プロでの成功イメージ」として、リリーフ向きと分析されています。
持木:昨年の夏の甲子園では抑えでいいピッチングをしていましたからね。
山岸:同じく左腕の松井裕樹投手(楽天)のような守護神になれるということでしょうか?
持木:松井投手はストレートとスライダーのコンビネーション。高橋投手は球威抜群の重いストレートとフォークのコンビネーション、その点は違います。でも、高橋投手がストレートの勢いとフォークで打者を打ち取る投球を見ていると、抑えで活躍するイメージが湧きますね。
山岸:そこで、左投手では珍しいフォークがより効いてくると。
持木:今のプロの現役選手で、フォークを武器にしている左腕投手はいないんじゃないでしょうか。きっと武器になるでしょう。
山岸:左腕、剛球、フォーク。ロマンがありますね(笑)。
持木:そうですね。そもそも左腕は「神話」として優位にあります。そこに加えて剛球とフォークですから。高橋投手にはロマンを呼び起こす条件が揃っています。
山岸:右のオーソドックスな豪腕も昭和的な神話性を掻き立てますが、最近は「左対左」という言い方がされるように……。
持木:「左」の方がフォーカスされやすいですよね。
山岸:プロ野球ではハラハラさせる「劇場型」の抑えもある意味で人気ですが、高橋投手のコントロールの精度が上がってくると、守護神として安心ですね。
持木:今のコントロールは、とりあえずストライク周辺には投げられるというレベル。その点ではまだまだ発展途上ですが、いいものをたくさん持っている投手なので、壁に当たるまでは、勢いのいい投げっぷりで思いっきり勝負してほしいです。
守護神に向いているとも評価されている高橋投手。球威抜群のストレートと左投手では珍しいフォークがプロ相手にどこまで通用するか。ロマンを感じずにはいられない。
文=山岸健人(やまぎし・けんと)