球団創設9年目にして東北楽天が初制覇を遂げた今年の日本シリーズ。「球団初」「東北初」「星野監督初」など様々な初モノで溢れ、そして実に様々な衝撃に満ちていた。今回はその“衝撃度”を楽天、巨人それぞれの視点からランキング形式で振り返ってみたい。
【東北楽天ゴールデンイーグルス・日本シリーズ衝撃度ランキング】
今季無敗(24勝0敗1S)でシーズンを終えた田中が、日本シリーズ第6戦で今年初となる黒星を喫した。連戦の疲れもあったのか、ストレートが高めに浮いたところを坂本、ロペス、高橋由らに痛打され4失点。不敗神話が遂に崩れてしまった。
実はこの前日、11月1日が田中25歳の誕生日。24歳の終わりとともに、「無敵の魔法」も解けてしまったのだろうか!?
“楽天王手で田中先発”という状況に、誰もが「この試合で日本一が決まる!」と思いこんでいた分、その衝撃度は大きかった。
前日の第6戦で160球を投げ抜き、もう登板はないと思われていた田中。ところが第7戦の最終回のマウンドに上がり、楽天日本一の胴上げ投手に輝いた。
満員でも2万5000人強しか収容できないKスタ宮城。第6戦、7戦では球場外にパブリック・ビューイング(PV)会場を設けたが、1万人を超えるファンが詰めかけ大混乱となった。これにはテレビ中継のアナウンサーも「仙台市の皆様、今から向かってもPV会場には入れません。ぜひ、テレビで観戦ください」とアナウンスするほどだった。
【読売ジャイアンツ・日本シリーズ衝撃度ランキング】
10月30日、監督としてV9を達成した川上哲治氏が逝去していたことが明らかになった。93歳だった(※亡くなったのは28日午後)。当日の試合では両チームが喪章をつけて臨み、試合前には黙祷が捧げられた。
球団としてV9以来40年ぶりの日本シリーズ連覇を目指していた巨人。川上氏の訃報で改めて「V9以来」という記録が注目されたが、その偉業達成を墓前に届けることはできなかった。
戦前の予想では、巨人打線vs楽天投手陣という構図になると思われていた今年の日本シリーズ。だが、蓋をあけてみれば、巨人打線は湿りっぱなし。その最たる例が巨人打線の要、阿部だった。全7戦フル出場して、22打数2安打。打率.091と、なんと1割にも届かず、完全に「逆シリーズ男」になってしまった。
これまで何度もそのバットでチームを鼓舞してきた男の沈黙。日本シリーズは捕手の負担が大きいとはいえ、来季以降にも響きかねない大不振だった。
打線の「逆シリーズ男」が阿部なら、投手陣のそれは杉内だった。
昨年のポストシーズンは左肩痛で一度も登板できず、無念を晴らしたい杉内だったが、日本シリーズでは第3戦に先発するもわずか56球で降板。雪辱をかけて臨んだ最終第7戦でもコントロールが定まらず、わずか35球でまたもやノックアウト! 2試合の合計が100球にも満たず、防御率13.50という散々な記録を残し、投手陣の「逆シリーズ男」となってしまった。
楽天サイドは他にも、藤田・涙の交代劇や、ピッチャー則本の激走がもたらした得点シーンなど、見どころが多い展開が続出した今シリーズ。
一方で巨人は、上述した阿部、杉内以外でも、坂本やロペスのエラーに加え、攻撃面でも拙攻ばかりが目立った。むしろよく3つ勝ったな、という印象が残り、それが巨人の層の厚さであり、一発で形勢逆転できる「野球の恐さ」も感じた日本シリーズだったと言えるだろう。
文=オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。「エキレビ!」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。また「幻冬舎WEBマガジン」で実況アナウンサーへのインタビュー企画を連載するなど、各種媒体にもインタビュー記事を寄稿している。ツイッター/@oguman1977