司会者から「一番すごいと思った投手は誰?」と話題を振られた山本昌。野茂英雄(元近鉄ほか)? 伊藤智仁(元ヤクルト)? 佐々木主浩(元横浜ほか)? とさまざまな投手の名が司会から挙がる中、山本昌が答えた投手は?
「今、名前が挙がった投手、全員の球を打席から見ましたが、その中にはいないです。私が今まで一番すごいと思ったのは、元巨人の斎藤投手です」
沢村賞3度、最多勝5度のタイトルを獲得して1990年代の巨人投手陣を支え、今年1月、野球殿堂入りを果たした斎藤雅樹・現巨人2軍監督の名を挙げた。
「斎藤さんは、学年でいうと僕のひとつ上。プロ野球記録の『11試合連続完投勝利』(※1989年)の最中に何度か打席に立ったんです。サイドからホップしてくる球、あれは打てない! 特に、左打者には内側に食い込んでくる感じなんです。これは、チームはちょっと打てないぞ、と思いましたね」
歴代最高投手として元巨人エースの名を挙げた山本昌。現役選手の中で選ぶとしたら? という問いに対しても、巨人のエースの名を挙げた。
「現役の投手で一番楽しみなのは、巨人の菅野(智之)投手ですね。今、日本のピッチャーで一番勝利が計算できる投手だと思います」
その評価は、今年のキャンプでたった3球見ただけで確信に変わったという。
「今年の巨人キャンプ、僕は菅野投手のピッチングを3球見ただけで違うところに行ったんです。その僕の姿を見て、菅野投手は『昌さん、俺に興味がないんだ』と思ったみたいなんですが、違うんです。3球見れば十分! こんなのもう見なくてもいいや、と。それくらいスゴイ投球だったんです。だから、僕はキャンプの時から、今年の最多勝と防御率は菅野、と言っています」
4月22日のDeNA戦では、右手中指のマメをつぶしながら7回まで投げ抜き、2安打無失点の好投を見せた菅野。その試合で解説を務めた際、こんなエピソードがあったことを明かした。
「あの試合、僕は初回から『菅野の調子、よくないですね』と解説で言っていたんです。試合のあとにTwitterを見てみたら、ボロカスに言われてました。『この解説、おかしい!』『何言ってんのこいつ、2安打じゃん』と(笑)。でも、一目見て、ちょっとおかしいな、と思ったんです」
その「ちょっとおかしいな」こそ、右手中指のマメのサインだったわけだ。素人ではまず気づけない、ちょっとした違いや変化に気づく確かな目。これこそ、「野球解説者・山本昌」の真骨頂といえるのではないだろうか。
実はニッポン放送ショウアップナイターは今年50周年。そのメモリアルイヤーの目玉として、50歳までプレーした山本昌が今季から解説陣の仲間入りを果たした格好だ。今後もその確かな「野球眼」をもとに、野球ファンやリスナーを楽しませてくれるのは間違いない。
文=オグマナオト(おぐま・なおと)