開幕直後、野球好きの心を一気につかんだのが中日の新助っ人、ビシエドだ。
近年、中日の助っ人戦略といえばコスパ重視。低年俸のドミニカンを連れてくることだ。しかし、ビシエドの年俸は1億7000万円(推定)と破格。背番号も落合博満GMが監督時代に着けていた66番を託された。
渉外担当を兼ねる森繁和ヘッドコーチが「自らの首を賭ける」とまで言い放つ大砲は、シーズン前からチームの浮沈を握る存在として注目された。
期待に応えるように、ビシエドは開幕から3戦続けての本塁打を記録。来日1年目の外国人選手では初の快挙を達成した。京セラドーム大阪での阪神戦での出来事だったので、在阪メディアはビシエドの名前を聞くだけで震えてしまうとか……。
一時は15試合以上本塁打が出ないほどの不振に陥るも、7月に入って調子は上向き。オールスターにも選出された。まだまだビシエド旋風は続きそうだ。
他にも来日2年目のナニータが定評のあるアベレージだけでなく、長打力をも発揮。本塁打は昨季の0本から8本に増加した。左翼のレギュラーをがっちりとつかみ、独特の応援も相まって人気上昇中だ。
投手ではバルデス、ジョーダン、ネイラーが先発ローテーションの一角を占め、リーグ有数の投手スタッフに貢献。中日の助っ人は投打でしっかりと働いている。“よくできました”の評価を与えてもいいだろう。
「ちょっとマテオ!!」と阪神ファンの嘆きが聞こえてきそうである。
昨季まで守護神を務めていた呉昇桓(現・カージナルス)に代わり、新守護神候補として入団したのがマテオだ。
150キロ前後の快速球とキレ味鋭いスライダーを武器に、チームの思惑通り開幕からクローザーを襲名。開幕3戦目に来日初セーブを挙げると、以後も順調にセーブを積み上げ、防御率は1点台をキープ。役割を十分に果たしていた。
異変が起きたのは5月半ば。15日のDeNA戦でロペスに来日初被弾を浴びるなど、2点を失いリリーフ失敗。続く17日の中日戦では下半身の違和感を訴え、登板回避。その後なんとか復帰するも26日のヤクルト戦まで5試合連続失点を喫し、28日に登録抹消。この乱調は右肩関節炎が原因だった。
マテオの穴は、同じく来日1年目のドリスが埋めている。6月以降は11試合に登板し、いずれも無失点リリーフ。交流戦中盤からは、最終回を締める機会も増えている。
このままドリスが守護神の座を奪うのか、メジャー実績が上のマテオが奪い返すのか。その行方に注目しよう。
来日7年目のメッセンジャーは今季もタフネスぶりをみせ、ゴメスもチームトップの51打点を記録。この2人は主力中の主力なので、これくらいはやって当然。チーム全体としての評価は“まずまずです”が妥当だ。
まだ記憶に新しい出来事だ。ヤクルトの守護神・オンドルセクが、6月26日の中日戦で首脳陣に暴力的な態度をとって謹慎処分に。すでに練習は再開しているというが、小川淳司SDは「期限がいつまでというのはない」と、処分が継続中であることを示唆。1軍への復帰は「総合的に判断する」とした。
バーネット(現・レンジャーズ)の移籍に伴い、今季から9回を任されるようになったオンドルセク。203センチから投げ下ろすボールを武器に、開幕から16試合連続無失点をマーク。チームを優勝に導いた前任者に負けない存在感をみせていた。
そんななかで起こったこの“事件”。暴力的な態度はこれが初めてではなかったようで、ついに真中満監督の堪忍袋の緒が切れた格好だ。
投手陣ではルーキ、デイビーズ、ペレスと今季入団組のうち、ルーキがチームトップの17ホールド、防御率2.58と好成績。主砲・バレンティンはリーグ4位タイの16本塁打と及第点の数字を残している。
オンドルセクの一件で助っ人の評価はガタ落ちだが、他の選手の奮起に期待。全体としては“がんばりましょう”にしておこう。
文=加賀一輝(かが・いっき)