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第13回『ポンチョ』『おれはキャプテン』『おおきく振りかぶって』より

「球言(たまげん)」とは、名作&傑作マンガに登場する野球格言≠フことである。野球というスポーツの真理を突いた一言、技術を磨く名言、駆け引きを制する名台詞の数々は、現実のプレーや采配にも役立ったり役立たなかったりするのだ!

★球言1



《意味》
 内角のボール球からストライクに入ってくる球をインドア、外角のボール球からストライクに入ってくる球をバックドアと呼ぶ。後者は、特に選球眼のいい打者に対して有効な球種である。

《寸評》
ドア系とはつまり、ハズれたコースからストライクゾーンへ寄ってくる球のこと。逃げる球と合わせて使うことで、内外の出し入れに幅を持たすことができる。選球眼のいい打者は、外角の見極めが早いため、手もとで変化する前にバックドアをボール球と判断しやすい。

《作品》
ポンチョ』(立沢克美/講談社)第3巻より


《解説》
 「甲子園常連の強豪」武総高と、「県内最弱と言われる」京曜高による野球交流戦。第54回を数える伝統の行事も、今年が最終戦。ラストゲームの舞台は、日本ハムファイターズのファーム本拠地・鎌ヶ谷スタジアムに決まった。
 両校の生徒が見守る中、試合は意外にも京曜高ペースに。一回表、「バッティングセンター王」を目指す不思議な一年生・大江慎弥(=通称・ポンチョ)が先頭打者アーチを打つと、二番の加藤敦、四番の徳井晃二もヒットで続き、初回を2対0で終える。
 二回裏。武総高の打順は、四番・大杉慎太郎。豪快なスイングに加え、ボールの見極めもいい大杉に対し、京曜高の捕手・秋山カシオは「メジャーで流行ってるドア理論」の話を思い出す。外角のボールから内側へ入ってくる「バックドアのツーシーム」。狙い通りの見逃し三振。セカンドのポジションで見ていた加藤が、心の中で語る。
 「バックドア とりわけこれは 選球眼に自信のあるやつほど効果的なんだ」


★球言2


《意味》
 右投手が右打者に向かって投げるヒザ元のシンカーは、バットを立てるつもりで振り抜くことにより、テコの原理が働き、うまく当たれば鋭い打球を弾き返すことができる。

《寸評》
 斜めに落ちながら内角低めへと入ってくるシンカーに対し、バットを横に切るのではなくタテに振る。すると左手首が固定され、そこを支点にヘッドが強く返る。ただし、この打法は「芯でとらえないとドライブがかかって・・・・みんなファールになっちまうかもしれない」とのこと。

《作品》
おれはキャプテン』(コージィ城倉/講談社)第14巻より


《解説》
夏の西東京大会で決勝に進出した朋王学園。対戦相手の東香西高は、シンカーを得意とする一年生の右投手・茉莉村を先発させてきた。
 朋王学園の監督・ロジャー井慈田は、この投手起用を事前に予測。こちらも一年生の右打者・蟹江西人を四番に配置する。ところが、朋王学園のキャプテン・カズマサ(=霧隠主将)は、決勝戦での急なスタメン変更に疑念を抱く。もしかしたら監督のロジャーは、ワザと負けるために「疑惑の采配」を振るつもりではないかと。
 二回表、打席へ向かう蟹江にロジャーが指示を与える。
「ヒザ元のシンカーは バットを立てるつもりで振れ・・・・うまく当たれば テコの原理で鋭い打球が飛ぶ」
 半信半疑のまま、打席で実践を試みる蟹江。すると、打球はレフトへ高々と上がり、そのままポールを直撃。値千金の先制ソロホームランとなった。
ロジャーの「疑惑の采配」が思わぬ好結果を生む状況に、カズマサは困惑を隠し切れなかったが……。


★球言3


《意味》
 グラウンドで戦う選手たちにとって、ミスやピンチのときに起こる味方のタメ息は、相手のヤジよりもキツいもの。応援団は、常にポジティブシンキングを心がけ、スタンドを盛り上げておくこと。

《寸評》
 高校野球をスタンドで観戦していると、保護者や同級生たちのタメ息が本当によく聞こえてくる。一生懸命に応援しているがゆえの結果だろうが、その事実を選手たちもわかっているだけに、エラーや失点の直後だとダメージが倍増するはず。ムード作りの盲点を突いた、なかなか鋭い指摘。

《作品》
おおきく振りかぶって』(ひぐちアサ/講談社)第4巻より


《解説》
 硬式野球部ができたばかりの西浦高は、一年生だけのチームで全国高校野球選手権の埼玉県大会に挑むことに。
 その直前、監督の百枝まりあは、野球部のために応援団を作るという浜田良郎に挨拶をする。若い女性監督を前に、頬を赤くする浜田。まりあは彼に、応援団の重要性を説く。
 「応援団は 選手を元気にもできるけど 選手のやる気を一気に奪うこともできるの!(中略)浜田君 スタンドの何が選手のやる気を奪うんだと思う?」 浜田は悩む。敵の応援でもなく、ヤジでもない。答えは「味方のタメ息」だろうか。
 「当たり! 応援団はタメ息ついちゃイケナイの!」
 まりあとの会話によって、スタンドでもっともタメ息をつきやすいのは、「一番 熱心に応援して」いる保護者だということに気付く浜田。
 「浜田君はタメ息ついてる親を見つけたら スタンドからたたき出してちょうだい!」
 あながち冗談とも思えない彼女の目つきに、ドキドキが止まらない浜田だった。


文=ツクイヨシヒサ
野球マンガ評論家。1975年生まれ。著書に『あだち充は世阿弥である。──秘すれば花、『タッチ』世代の恋愛論』(飛鳥新社)、編著に『ラストイニング勝利の21か条 ─彩珠学院 甲子園までの軌跡─』(小学館)など。

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