開幕前、『別冊野球太郎 プロ野球[呪い]のハンドブック』で指摘していた広島東洋カープの「呪い」の代表的なものは以下の5つだった。
◎カープは鯉のぼりの季節まで
◎開幕4番の呪い
◎交流戦の呪い
◎サウスポー不在
◎マツダスタジアムの呪い
順を追って検証していこう。
誰が言ったか、いつ生まれたか、詠み人知らずのプロ野球名格言の1つ「カープは鯉のぼりの季節まで」。毎年、開幕ダッシュに成功しても5月の連休明けには失速してしまうカープを揶揄した言葉で、実際、過去のカープは5月の連休明けくらいから下位に沈んでしまうことが多かった。
しかし、今季はこの呪われた格言を遂に払拭! 6月まで首位の座を守り、その後もAクラスを維持している。もう「鯉まで」なんて言わせない!?
広島の開幕ダッシュと鯉の季節の躍進を支えたのは、紛れもなく主砲・エルドレッドだ。ゴールデンウィーク明けの段階ではセ・リーグ打撃三冠王を独占する圧倒的な支配力でチームを牽引した。各専門家の間でも、今年のカープ躍進の理由は4番にエルドレッドという軸ができたから、という意見が多かった。
これで、開幕戦で4番を務めた選手はそのシーズン、打撃不振になるどころか試合出場もままならないという「開幕4番の呪い」が今年こそ払拭できたか!? といえば、そうではない。実は開幕から5試合目までは4番に座っていたのはキラで、エルドレッドは6番だったのだ。そして案の定というか、キラはシーズン中に1軍と2軍を行ったり来たり……。「開幕4番の呪い」、恐るべし!
「鯉の季節」は乗り切ったカープだったが、交流戦の季節は乗り切ることはできなかった。交流戦出鼻にソフトバンクとオリックスというパの2強にぶつかった巡り合わせの悪さもあるが、いきなりの4連敗で一気に失速。その後もなかなか勢いは取り戻せず、9勝15敗で交流戦最下位に。セ・リーグ首位の座も交流戦中に明け渡してしまった。
特に不調だったのが打撃陣。チーム打率こそ交流戦を制した巨人と同じ.255だったが、ヒットがつながらず得点は一発攻勢ばかり。総得点は全体のワースト2位と振るわなかった。もっとも、最後に5連勝を飾ったのはチームが変わりつつある兆しだったのかもしれない。
昨年の左腕の先発勝利数がたった2勝と、慢性的な左腕不足に悩むカープの台所事情。今季はFAで大竹寛が抜けたこともあり、投手陣にとっては登板機会も増える大チャンスのはずだった。ところが、フタをあけてみても、やっぱり左腕不足は解消されない。
開幕当初は篠田純平が先発ローテーションに入り、5月9日に3勝目を挙げ、昨年の左腕の先発勝利数は超えたものの、6月3日の先発以降、篠田は1軍で投げていない。さらに6月末には交流戦で好投を続けた貴重な中継ぎ左腕・久本祐一が左ヒジ尺側手根屈筋起始部(ひだりひじ しゃくそく しゅこん くっきん きしぶ)損傷で長期離脱となってしまった。
そんな中、希望の光はプロ3年目の戸田隆矢か。今季ここまで、プロ入り初勝利を含む3勝1敗4ホールドという数字を残し、夏場には中継ぎにまわり、連日登板。もちろん、これから佳境を迎える優勝争いをするチームへの貢献も期待しつつ、今季の経験を生かして、来年は先発ローテーション投手として、1年間、戸田が活躍することを期待し、呪い払拭を祈願したい。
去年は負け越していたホーム・マツダスタジアムでの成績が今季は急上昇。ここまで35勝21敗1分と圧倒的に勝ち越している。特に見事なまでの内弁慶ぶりを発揮しているのがエース・前田健太。ここまでの10勝のうち、マツダスタジアムでの勝利がなんと8勝と、ホームでは無類の強さを見せている。