そんな稲葉氏について、今から4年前に「将来、球界のリーダーになる男」と評していた人物がいる。かつてチームメイトとして同じユ二ホームを着て戦った、木田優夫・現日本ハムGM補佐だ。
2013年に木田氏が上梓し、野球太郎編集部も制作にかかわった『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』のなかで、稲葉氏に関して“ファイターズのリーダーから、球界のリーダーへ”と題し、次のように紹介していた。
《技術はもちろん、野球に対する姿勢がとにかく素晴らしい。年下だけど尊敬できる野球人の一人》
《周囲からの人望も厚く、人氣者の稲葉。そのあまりの人氣ぶりが氣になった僕は、メディアに出る機会があればいつも「稲葉のイメージを落としてやろう」と思って行動していた。でも、何をしても人氣が落ちることはなかった》
(原文ママ)
興味深いのは、小久保裕紀・前侍ジャパン監督についても、同書のなかで《一緒のチームでやったことがないけども、尊敬できる野球人の一人。人間的にしっかりしていて、これからのプロ野球を支えて欲しい人物》と、同じようなコメントを残していたこと。もちろんこれも、小久保氏の侍監督就任前のことだ。日本代表の指揮を執るような人物は、まずは現場の人間から尊敬を集めていることが大事、といえるのではないだろうか。
実は木田氏、この本のなかで、「年下だけど尊敬できる、今後の球界を担って欲しい存在」として、4人の野球人の名を挙げていた。それが、前述した稲葉氏と小久保氏。そしてもう2人が田口壮氏(現オリックス2軍監督)と宮本慎也氏(元ヤクルト)だ。
結果的に、4年前には指導者経験もなかった4人の内、2人が代表監督に就任。さらに2軍とはいえどプロ球団の監督になった人物もいるのだから、木田氏の先見の明たるや、と唸ってしまう。
この4人のうち、同じチームでプレーした経験のある宮本氏、稲葉氏、田口氏については、さらに詳しくこんなコメントも記していた。
《三人に共通するのは、とにかく野球に対して真面目で、自分にも周りにも妥協がないこと。そして、チームのためを最優先で考えられることです。たとえば、宮本ならショートからサードへ、稲葉なら外野からファーストへ。チーム事情を鑑みて、自分が誇りを持っている守備位置からのコンバートも受け入れ、しかもそこでちゃんと結果を出してしまう。田口も外野ならどこでも守れて、さらには守備固めでも代走でもと、どんな役割も受け入れたからこそ、メジャーでも尊敬される地位を築いたんだと思います》
4人のうち、宮本氏だけはまだ指導者歴はないが、将来のヤクルトの監督候補といわれて久しいし、稲葉ジャパンでコーチ就任の可能性だってあるだろう。
いずれにせよ、稲葉ジャパンがどんな選手とコーチを選び、どんな野球を見せてくれるのか、今から楽しみで仕方がない。
文=オグマナオト