御存知の通り、今シーズンのヤクルトはセ・リーグ最下位に沈んだ。16連敗を喫するなど、5位の中日からも9ゲーム離される屈辱的なシーズンだった。ただ、かなり負けたが、それでも50勝82敗1分で勝率.418なのである。2017年の45勝96敗2分、勝率.319がいかに凄まじかったがよくわかる。
そんなヤクルトは序盤戦こそ好調だったが、徐々に徐々に負けが込み16連敗でとどめを刺された。しかし、筆者が感じた「優勝を逃してしまうのではないだろうか」といった予感めいたものや、「いや、これはまずいな」と感じたターニングポイントは別にあった。
それは4月30日から5月2日にかけて行われた、DeNA対ヤクルト(横浜スタジアム)の3連戦である。
この3連戦が始まる前、すなわち4月29日終了時点で、ヤクルトは14勝11敗1分の2位だった。開幕から1カ月ほどの順位はあまり当てにならないものだが、少しでも上にいるほうが気は楽になる。昨シーズンの2位から上へいけるかも、といった気分の高揚は少なからずあった。
一方のDeNAは9勝16敗で最下位。4月16日からの8連敗があり、流れはよくなかった。この時点でまさかDeNAが2位でシーズンを終えるとは、多くが予想していなかったのではないだろうか。
ヤクルトからするとビジターゲームとはいえ、調子の悪いDeNA相手。3連勝は難しくとも、2勝1敗で勝ち越したい、そんな3連戦だった。
その初戦は延長戦の末、9対8で辛勝している。しかし、序盤の7点リードを守れず、一時は逆転を許す苦しい展開だった。先発は新人や経験の浅い若手ではない。まがりなりにも次期エース候補とも呼ばれる原樹理である。
チーム状況のよくない相手に対し、序盤の7点リードを守れない。そんな展開を見て冷や汗をかいた。「昨年は2位になったとはいえ、この時点のDeNAは強いチームとは言えない。今の順位はいいけど危ない」そう感じたことを覚えている。
案の定とでもいうべきか。翌日からの2試合は連敗。2勝1敗で切り抜けたかった3連戦が1勝2敗となってしまった。
5月1日の試合では、絶不調だったハマの安打製造機・宮崎敏郎に21打席ぶりの安打となる、復活の適時二塁打を放たれるなど、DeNAファンは歓喜の展開。ヤクルトにとっては申告敬遠のあとの一打だっただけにショックは大きい。激しく降る雨は冷たかった。
5月2日はDeNAのエース・今永昇太の前に打線が沈黙。ゴールデンウイーク半ばの横浜スタジアムではDeNAファンが盛り上がり、ヤクルトファンは沈黙…。圧倒的にDeNAファンの数が多いとはいえ、コントラストがより鮮明になっていた。
あっさりと勝てそうな試合が辛勝となったところから歯車がおかしくなった。それは脆さが露呈したポイントだった。そんな気がしてならない。
この3連戦以降は勝ったり負けたりの繰り返しが2週間。いわゆる一進一退で踏みとどまっていた。しかし、5月14日から悪夢の16連敗。そこからは浮上することなく、シーズンを終えている。
村上宗隆の本塁打や打点、山田哲人によるトリプルスリーへの挑戦。中山翔太や廣岡大志といった次世代の大砲候補たちの一発。高橋奎二や梅野雄吾の奮闘…見どころはたくさんあった。
しかし、その全てが“今シーズン”の優勝を目指す雰囲気のなかでの結果ではなかったところは少しさみしい。
来シーズン、「去年の結果が優勝へつながった」と言えるようになれば、それも報われる。
文=勝田聡(かつた・さとし)