週刊野球太郎
中学、高校、プロ・・・すべての野球ファンのための情報サイト

各球団の色が出た今年の補強方針を牛込惟浩氏が総括する!

★メジャー アナリスト・牛込惟浩氏の総括★
今年に賭ける楽天の大型補強
近年の補強カラーが見えた!

ペナントレースの行方をも左右する新外国人選手。今年はメジャー実績十分のビッグネームあり、隠れた原石ありとバラエティーに富んだ顔ぶれがそろった。数々の名助っ人をスカウトしてきたメジャーアナリスト・牛込惟浩氏が、その厳しい眼力で2013年の新外国人を徹底分析する!(取材・構成=御手洗あつひこ/写真=田口有史)

『週刊野球太郎』版の第3回目です。

――今年も多くの外国人選手が日本にやってきたわけですが、牛込さんから見て、いい補強をしたなという球団はどこですか。

牛込 それは楽天ですね。これまでは外国人選手にあまりお金を出さない球団の印象でしたが、今年はアンドリュー・ジョーンズを約3億円、マギーも約2億3千万円で獲得しています。

――球団としての方針が変わったんでしょうか。

牛込 う〜ん、獲得資金についてはオーナーの三木谷さんの意向次第なので、今年限りなのか、今後も継続していくかはわかりませんね。ただ、今年に勝負を賭けてるのは間違いないですよ。

それから私が感心したのは、その獲得方法ですね。マギーに関しては巨人との争奪戦になっていたんですけど、楽天は球団社長が自らウインターミーティングに出席して、話をまとめてきましたからね。

 外国人獲得はマネーゲームになりがちだけど、アメリカ人だって金だけで動くわけじゃないんですよ。実際に顔を会わせれば「こいつを助けてやるか」って気持ちになるんです。楽天は会社の公用語として英語を採用しているけど、球団のトップが英語で自ら交渉できるというのは、今後のスカウト活動においても大きいと思いますね。



▲巨人との争奪戦に勝ち、獲得したマギーは楽天の打線強化に大きく貢献している


――ウインターミーティングには日本の球団がすべて足を運んでいるわけではないんですか。

牛込 私もスカウト時代は毎年、通ってましたけど、当時は来てない球団も多かったですね。広島のように駐米スカウトに任せている球団もあるので、日本から全球団が足を運んでいる可能性は低いと思いますよ。

――楽天以外で印象に残った球団はありますか。

牛込 阪神とDeNAは、実力はもちろんだけど、チームの雰囲気を変えられそうなプレースタイルの選手を獲得しましたね。そこまで考えて獲得したかどうかはわかりませんが、おもしろい補強だったと思いますよ。

――ここ数年、各球団の外国人選手の獲得方針がハッキリしてきたように思うのですが。

牛込 そうですね。チーム強化のため必要な選手を獲得することにお金を惜しまないソフトバンクや巨人。コンラッド以外にも西岡、福留を獲得するなど非常に大きなお金をかけた阪神も同タイプです。

 その一方でドミニカルートの中日、独立リーグやメキシコリーグから選手を獲得したオリックスや日本ハムなどは、あまりお金を使わないでいい選手を見つけようという方針ですよね。


――今年はロッテ、ヤクルトと新外国人を獲得しなかった球団が2球団ありましたが、予算的には厳しくなってるんでしょうか。

牛込 一部の人気球団を除けば予算に関しては厳しくなっていると思います。ただ、限られた予算の中でいい選手を見つけるのがスカウトの仕事ですからね。そりゃ、予算があればいい選手を簡単にとることはできますよ。

 でも、それじゃおもしろくないじゃないですか。スカウトの醍醐味は「スリーパー」、つまり眠っていた掘り出し物を見つけることだと私は思ってますから。


★昨年の「新外国人」総括★

 2012年に日本にやってきた新外国人選手の結果を振り返ってみよう。KBOで三冠王を2度獲得した韓国の英雄・李大浩(オリックス)は、日本でも勝負強さを発揮して打点王を獲得。メッツからドラ1指名を受けた金の卵・ミレッジ(ヤクルト)も主に1番打者として3割、21本塁打と活躍した。同じく21本塁打を放ったペーニャ(ソフトバンク)や41盗塁のヘルマン(西武)も合格点だろう。

 投手では、メジャー通算119勝、最多勝経験もあるペニーをソフトバンクが獲得するも、わずか1試合に登板しただけで「環境に馴染めない」という理由で退団。新たな「お騒がせ外国人」として記憶に残りそうだ。成功例は、リリーフで活躍したミコライオ(広島)、ソーサ(中日/現DeNA)、ウィリアムス(西武)など。

★現時点での「新外国人」の活躍度は?★

 上記までは『野球太郎』本誌からの転載だったが、最後は新規収録となる。実際に開幕して2カ月、新外国人選手はどんな活躍だったかを簡単に振り返ろう。

 新外国人選手の中で大当たりなのは、ルナ(中日)であるのは間違いない。開幕から17試合連続安打、一度途切れるも次は23試合連続安打、5月まで打率4割をキープした。「コンパクトなスイングから鋭いライナーを打ち返します」という牛込さんのコメント通りのバッティングで、C+という評価を覆す結果を残している。低迷するチームの中で輝きを放っていた。


▲5月の月間打率が4割超で月間MVPも獲得したルナ(中日)


 ルナに続いて存在感を見せているプレーヤーはパ・リーグからアブレイユ(日本ハム)とマギー(楽天)だ。アブレイユの本塁打数はパ・リーグトップ(6月10日現在)。マギーはシーズン当初は打率1位をキープするほどのハイアベレージを誇っていたが、いまは少し調子を落し気味。それでも3割を保っており、チームトップの打点。ともにB+という評価に見合った、いやそれ以上の活躍を見せている。

 評価以上の活躍といえばロペス(巨人)もそうだ。C+の評価だが、3割前後の打率をキープし、11本塁打は十分な活躍といえる。さらに、長野とのライトゴロを完成させた際のハーフバウンドのキャッチングなどは牛込さんのコメント通り「グラブさばきのいい」ところが伝わってくる、攻守において味を出している。この成功はウエイトコントロールをきっちりできているからなのだろう。


▲アメリカ時代のロペス(巨人)


 評価がA−のラヘア(ソフトバンク)、A+のA.ジョーンズ(楽天)という高評価だった両選手は、ハードルが高いだけどに「そこそこ」といったところか。ラヘアは打点がリーグ2位、ジョーンズは打率は低いが、一度も4番を譲らず、四球がリーグトップで安打数と同じという選球眼のいいところが光る。さすがメジャー。

 投手はというと、ディクソン(オリックス)が先発として防御率1点台と崩れにくく、チームでは西に次ぐ5勝を挙げている。「決め球がない」というコメントはこれから効いてくるか、その前に打たせてとっていけるか…。

 続く存在の名前が出てきにくいが、4勝を挙げているカブレラ(中日)は評価がB+とよかったことを考えると、「そこそこ」といったところか。5月8日以来白星がない。
 評価がBのパディーヤ(ソフトバンク)は1軍復帰した5月20日からは球威あるストレートを中心に好投するが、スタミナがないのが不安。コンディションがまだよくないからなのか、本当にスタミナがないかは、今後の投球に注目したい。

 反対にすでに“ハズレ”感が出てしまっている選手もいる。名前は伏せておくが、現状だとそれぞれのチームでポジションが奪われてしまっていて、相当な巻き返しや、インパクトある活躍がないと単年契約選手の再契約は難しい。

 しかし、今年のボウカー(巨人)のような2年目に結果を残す選手がいるかもしれない(調子がいい時にケガをしてしまったのは惜しい)。逆に昨季の活躍ぶりから今季も期待感が大きかったペーニャ(ソフトバンク)の大不振といった例もある。外国人選手補強の難しさもまた野球の醍醐味だ。

記事タグ
この記事が気に入ったら
お願いします
本誌情報
雑誌最新刊 野球太郎No.32 2019ドラフト直前大特集号 好評発売中
おすすめ特集
2019ドラフト指名選手一覧
2019ドラフト特集
野球太郎ストーリーズ
野球の楽しみ方が変わる!雑誌「野球太郎」の情報サイト
週刊野球太郎会員の方はコチラ
ドコモ・ソフトバンク
ご利用の方
KDDI・auスマートパス
ご利用の方