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台湾球界の今シーズンを振り返える――八百長疑惑や賭博事件…。暗い過去を乗り越え、空前の盛り上がりをみせた!

 2013年も残りあとわずか。振り返れば今年は、日本プロ野球界史上、歴史に残るシーズンだったといっても過言ではない1年だった。田中将大(楽天)の無敗記録やバレンティン(ヤクルト)のシーズン本塁打記録更新、久々にAクラス入りした広島、大谷翔平(日本ハム)の二刀流プロデビュー…。

 あまりに盛り上がり過ぎて、来季以降が心配になるほどのシーズンを終えたNPBと同じく、隣国の台湾プロ野球界・中華職業棒球大連盟(CPBL)も、空前の盛り上がりをみせた1年だったという。さらに今年は日本球界と台湾球界は何かにつけて、つながりが多かった。

 春先のWBCから始まり、高校球児が出場した夏の18U野球ワールドカップが台湾で行われた。秋には侍JAPANの強化試合、アジアシリーズも台湾で開催されたことは記憶に新しいだろう。今回の「やじうまジャーナル」では、いわば日本球界と“急接近”し、さらには歴史的な盛り上がりをみせた台湾球界の今シーズンを振り返ってみたい。

◎東京ドームで繰り広げられた死闘!
 目を引いた台湾野球の躍進


 まず思い出してほしいのが、今年3月に開催されたWBCだ。東京ドームで行われた直接対決は、歴史に残る死闘だった。1点リードを許した日本代表は9回二死、絶体絶命の状況から鳥谷敬(阪神)が盗塁を決め、井端弘和(巨人)が起死回生の同点タイムリーを放つ…。そして延長10回で日本に逆転されるや、台湾では多くの人々がショックで倒れて病院へ担ぎ込まれたという。

 日本代表を最後まで苦しめたチャイニーズ・タイペイ代表は、今年のWBCではベスト8入りを果たした。近年は後述する疑惑や低迷が続いていたが、この活躍により、野球選手たちは国民的ヒーローになったのだった。

◎冬の時代からの復活
 リーグ戦の観客動員数が2倍に!


 特に代表チームで主将を務めた、日本でもおなじみの陽岱鋼(日本ハム)は大人気で、ヤンキースなどで活躍した王建民(ブルージェイズ3A)に並ぶスーパースターとなった。そして台湾プロ野球の人気もWBCを契機に急上昇。今季のCPBLリーグ開幕から5日間の観客動員数は、過去最高を記録したという。

 実はこの台湾プロ野球、過去には相次ぐ八百長疑惑や賭博事件などでファンが激減した経緯がある。以前はリーグ存亡の危機にも直面し、2000年には1試合の平均観客数がわずか1,600人程度まで落ち込み、昨季の1試合の平均観客動員は2,400人程度だった。

 今季は統一ライオンズ、兄弟エレファンツ、ラミーゴモンキーズ、義大ライノズの4チームが前後期に分けた2シーズン制で優勝を争い、前期は義大が優勝。新球団として加わった義大(前身は興農ブルズ)は、メジャー歴代14位の通算555本塁打を誇るマニー・ラミレスを獲得。この“台湾野球史上最強の助っ人”ラミレスのデビュー戦にはなんと、歴代最多の2万人の観客が集まった。

 そして10月末には後期優勝した統一が義大と台湾シリーズを戦い、統一が4連勝して2年ぶり9回目の優勝を決めたシーズンとなった。台湾球界関係者によれば、今季のリーグ観客動員数は昨季の2倍以上に増えたという。

◎アジアシリーズでは楽天を撃破!
確実にレベルアップしている台湾野球


 さらにその両チームは11月15日から台湾で行われたアジアシリーズに出場。特に準決勝でNPB代表の楽天が敗れたことに驚いたファンも多かったのではないだろうか。

 勝利した統一は前述したとおり、台湾シリーズを制したいわば台湾王者。監督は日本ハムなどで活躍した中島輝士で、広島や中日などに所属していた紀藤真琴が投手コーチを務めるなど、日本野球を知る首脳陣を揃え、主力選手を欠いた若手中心の楽天に快勝。日本勢が決勝進出を逃したのは、今回が初めてだった。

 そのアジアシリーズ直前に行われた、野球日本代表の台湾遠征では3試合とも日本が勝利。しかし、スコアは第1、2戦とも4-2とロースコアに終わった。特に第3戦は1-0と「ひょっとして日本が負けるのでは…」といった雰囲気にもなった。日本を苦しめたWBCでの試合を挙げるまでもなく、台湾野球のレベルは着実にアップしてきていることを認識させられたシーズンでもあったといえるだろう。

 そしてこの原稿を書いている間にも、台湾ではアジア・ウインターリーグが行われている。冬季の温暖な気候を利用して若手選手の育成を目的として行われるリーグ戦で、メジャーの中南米での同リーグを見習い、昨年より台湾で開催されるようになった。主催はCPBLで、今年は日本、台湾、韓国、ドミニカ共和国が参加。総当たりの計21試合を戦い、12月21日には上位2チームで決勝戦が行われる予定だ。これも台湾の選手たちにとって、レベルアップにつながるのは間違いないだろう。

 ほかにも11月28日に行われた台湾プロ野球のドラフトではNPB経験者が次々と指名された。兄弟から指名を受けたのは林威助(前阪神)と鄭凱文(前DeNA)。義大からは蕭一傑(前ソフトバンク)が指名され、ラミーゴは許銘傑(前オリックス)を指名。台湾球界のレベルアップとともに、日本球界とのつながりも今後はさらに深くなっていくに違いない。

 果たしてアジア野球界のボーダーレス化は加速するのか。来季以降も、台湾プロ野球を追いかけても損はないだろう。


■ライター・プロフィール
鈴木雷人(すずき・らいと)…会社勤めの傍ら、大好きな野球を中心とした雑食系物書きとして活動中。"ファン目線を大切に"をモットーに、プロアマ問わず野球を追いかけている。Twitterは@suzukiwrite

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