広島の新助っ人入団会見に姿を現したザガースキーは、同時に会見に出席した誰よりも圧倒的な存在感を放っていた。それは、そのビジュアルがあまりにも目を引いたからだ。野球選手とは思えぬぽっちゃり具合が、
「かわいい」
と、カープ女子を中心に話題となり、シーズン前から早くも人気者の地位を獲得。
ビジュアルの効果もあり春季キャンプも、他の外国人選手より露出が高く、2月3日には広島恒例の外国人選手による恵方巻の儀式に抜擢。そのボディから見せる「食べ姿」は、他の追随を許さないほどハマり、かつてないほどフォトジェニックな1枚で紙面を飾ったのだった。
「カープの優勝。今年1年の、自分の健康と家族の幸せ」
を祈願して食したザガースキー。しかし、翌日に足首を負傷。この年のキャンプリタイヤ第1号となってしまう。
実は、この恵方巻の儀式を行った外国人選手は、ケガに見舞われるという嫌なジンクスが広島には存在していた。ファンのあいだでは呪いの儀式として恐れられていたのだ。幸せを願う恵方巻で、願った者に不幸が降り注ぐのだからネタでも笑えない。
その呪いは、例外なく天使にも降り注ぎ、ザガースキーを負傷に追い込んでしまった。結果的に、このキャンプでの負傷が響きシーズンでの活躍が叶わなかったともいえる。
しかし、この負傷を重く見た球団の意向で、翌年(つまり今年)から恵方巻の儀式は廃止となった。結果として自身の身を犠牲にして、翌年以降の外国人選手たちの体を守ったザガースキー。その、天使的犠牲心に涙した広島ファンは多い。
キャンプでの出遅れ、外国人枠の関係で、2軍調整を余儀なくされていたザガースキー。しかし、2軍にいてもその存在感は絶大で、話題には事欠かなかった。
前田健太(現ドジャース)が大量のハイチュウの山を前に子どものように喜ぶ画像をブログにアップしたり、無類の猫好きであることが話題になるなど、その可愛らしい私生活が露となり2軍にいながらファンの心を鷲掴みするのであった。
そんなザガースキーのとっておきの聖人エピソードを、チームメイトの大瀬良大地が紹介している。
大瀬良が先発投手を務めた試合は雨のため降雨ノーゲームに。その試合の中断中に心温まる出来事があった。
降雨のため、泥だらけになったスパイクで歩いていた大瀬良に対し、ザガースキーは自分の履いているスリッパを差し出した。大瀬良は一度は断るも、頑なに「使え」とスリッパを渡すザガースキー。自らは靴下のままだったという。
「自分を後回しにしてまで人を思いやる心に少し泣きそうになりました」
と、ザガースキーの思いやりに感動したことをツイートした。
このエピソードにファンは感動。聖人ザガースキーを象徴するイイ話として広島ファンの心に強く刻まれたのだった。
このように、プレーもさることながら、容姿、性格の可愛らしさがファンのハートをがっちり掴んで離さないザガースキー。
もちろん、プレーでの活躍が1番期待されているが、広島時代と変わらぬ天使ぶりが発揮される事を楽しみにしているファンは多い。横浜に再び舞い降りた天使の活躍を願わずにはいられない。
文=井上智博(いのうえ・ともひろ)