「夏と野球」と聞くと高校野球が連想されるが、熱さではプロ野球だって負けてはいない。後半戦の戦いのなかで優勝、CS進出、タイトルをかけた争いが激しさを増し、ペナントレースが日に日に盛り上がるからだ。
そんな夏場の真剣勝負だからこそ生まれるドラマがある。週刊野球太郎では、今回から2度に渡って「プロ野球夏物語」をお届けする。
まず気になるのは夏に調子を上げる選手、「夏男」の存在だ。筆者が着目したのはバレンティン(ヤクルト)。特に8月の本塁打に関しては、ケガで戦列を離れた2015年を除き、量産態勢に入っている。
■バレンティンの8月の本塁打数
2013年:18本塁打で月別ランキング1位(7月:9本塁打)
2014年:9本塁打で月別ランキング1位(7月:2本塁打)
2015年:出場なし
2016年:6本塁打で月別ランキング2位(7月:3本塁打)
2017年:9本塁打で月別ランキング1位(7月:11本塁打)
夏男らしく、2017年以外は7月よりも本塁打数を上げてきているのも特徴だ。「外国人選手は体が温まる時期になってこそ」という格言あるが、こうまでピタリと当てはまる選手も珍しい。
年々暑さが厳しくなっている日本の夏。屋外球場だとナイターでも観戦がきつくなるなか、嬉しいのが冷房の効いたドーム球場である。
しかし、パ・リーグの選手とファンは「ドーム」と聞いても、諸手を挙げて喜べない。なぜなら夏場の鬼門ともいえるメットライフドームでの試合があるからだ。
ご存知の通り、メットライフドームは半ドーム型の構造のため、夏場は湿気と熱がこもり、過酷なコンディションとなる。過去には、オリックス時代の糸井嘉男(阪神)を病院送りにするなど、屈強な選手をしても悲鳴をあげるほどの過酷さは、まさに戦場だ。
これだけなら「ビジターの洗礼」として片づけられるのだが、ホームとして慣れているはずの金子侑司(西武)も、足の感覚がなくなる軽い熱中症になったこともあるだけに、始末が悪い……。
「メットライフドームの熱は万人にとっての試練」と言ったところか。
祝日以外にも日々様々な記念日が制定されている日本の暦。そのなかにはもちろんプロ野球に関するものもあり、8月17日は「プロ野球ナイター記念日」となっている。
これは、1948年8月17日に横浜ゲーリック球場で、日本初のナイターとして巨人対中日の試合が行われことに由来している。「ナイター」という言葉はこの試合で初めて使われた。
今やナイター開催が主流になっているプロ野球だが、当時は照明などの設備が整っている球場が少なかったため、デーゲームが当たり前だった。
そんな時代に、ナイトゲームのカクテル光線を初めて見た70年前の野球ファンはどんな思いを抱いたのか。その感想を聞いてみたいものである。
充満する湿気をまとった熱気で、ただ生活することすら大変な日本の夏。その過酷な状況で野球をしようとするわけだから、プロとはいえ選手たちは大変である。
しかし、だからこそ起こるドラマもあるわけで、夏ならではのペナントレース模様を大いに楽しみたい。とはいえ身の危険を感じたら、糸井のように退く勇気も必要。それはメットライフドームに限らず……だ。
文=森田真悟(もりた・しんご)