近年、12球団のどこかで必ずといっていいほど追加されてきたマスコットの新キャラクター。2016年に登場したのが、日本ハムの「フレップ・ザ・フォックス」だった。
日本ハムのマスコットは、クマの「B.B」、2軍担当の子グマ「カビー」、紅一点のエゾリス「ポリーポラリス」に続いて4体目。「見習い」という扱いではあったものの、加入1年目で日本一を経験したのだから、日本ハムにとっては「幸運を呼ぶマスコット」だったのかもしれない。
2016年3月に行われた台湾と侍ジャパンの強化試合において、ヤクルト・つば九郎と中日・ドアラが侍ジャパン入り! としてニュースになった。
実は侍ジャパンにも公式マスコット「たまべヱ」がいるのだが、知名度はまだまだ。そこで先輩に当たる球界屈指のマスコットコンビの力を借りたい、ということでの侍ジャパン入りだったのではないだろうか。
もっとも、この強化試合で話題を集めたのは、マスコットよりも人気アニメ「おそ松さん」とのコラボ企画だった、というのが何とも口惜しい。
その後、11月に行われた侍ジャパン強化試合で、今度はつば九郎と、巨人のマスコット・ジャビットが侍ジャパン入り。ドアラが落選し、ジャビットに白羽の矢が立った理由は謎のままだ。
正確には「球団マスコット」ではないのだが、昨年もっとも注目を集めた球界キャラクターとして、オリックスのWEB上応援キャラクター「バファローズポンタ」に触れないわけにはいかない。
特に話題となったのが、負け続けたオリックスの成績と比例するように、「絶望する顔がカワイイ」とマニアックな人気を集めたこと。9月から3カ月連続で『バファローズポンタのおうえん絵日記』が出版されたことからも、その人気のほどがわかるはずだ。
12月22日には契約更改交渉に臨み、2017年シーズンもバファローズを応援することが決まったポンタ。今季はどんな喜怒哀楽を表現してくれるのだろうか。
WEB限定キャラクター「バファローズポンタ」に対抗したかったのか、球界マスコットの第一人者・ヤクルトのつば九郎を題材にしたWEBマンガ『天に向かってつば九郎』が突如、ドワンゴ提供の画像サイト「ニコニコ静画」でスタートした。
このマンガ、ちゃんと「ヤクルト球団公認」。そして、球団公認であるにもかかわらず、つば九郎を爽やかに演出しようなどといった思惑は一切なく、普段通りの「畜生ペンギン(畜ペン)」ぶりを発揮している。コミックス化が今から楽しみだ。
7月7日、横浜スタジアムで行われた試合で、DeNAのマスコット「DB.スターマン」が、熱中症でダウン! グラウンドに前のめりに突っ伏し、スタッフに両肩を借りてどうにか球場を後にする、という惨事が起きた。
この日の横浜は最高気温35度の猛暑日。DB.スターマンに限らず、マスコットにとって暑さは最大の敵であるのは間違いない。かつては暑さに負けてなかの素顔がバレた、なんて事件(事故)も起きたことがある。
だからこそ、野球ファンの夢を壊さぬよう、暑さ対策、体調管理にはくれぐれも注意していただきたい。
2016年の日本スポーツ界の大きなトピックスといえば、プロバスケットボールリーグ・Bリーグの開幕。宮城では、Bリーグ・仙台89ERSとプロ野球・楽天が早速コラボ。野球界としては初の試みに、楽天マスコット・クラッチとクラッチーナも参加した。
このとき、クラッチ&クラッチーナが何か特別なパフォーマンスをした、ということではないのだが、今後、こうした他競技とのコラボはさらに増えていくはず。その際、異なるファン層をつなぐ存在として球界マスコットは果たせる役割がきっとあるはずだ。
2017年も「親善大使」としてのマスコットたちの働きに注目していきたい。
25年ぶりのリーグ優勝を果たした広島。カープ特需でさまざまな関連グッズは発売されたなか、日本郵便中国支社が初めて企画したのが「カープ年賀はがき」。カープのマスコットキャラクター「カープ坊や」と、マスコットの「スラィリー」をデザインした年賀はがき(5枚入り600円)を発売した。
過去、切手のデザインに採用されたマスコットはいたが、年賀はがきは極めて異例。このニュースを読んでいる今、ひょっとして郵便ポストにはスラィリーの年賀はがきが届いているかもしれない。
12月18日、熊本で異種マスコット対決が実現した。熊本出身の荒木雅博(中日)の激励パーティーにドアラが出席。いつものコミカルポーズで耳目を集めていたはずが、くまモンがサプライズ登場するやいなや、話題の中心はくまモンへ。司会者からは「ドアラが嫉妬していますね」と笑われ、味方であるはずの荒木からも「もうお前はいいよ」と言われる始末。人気者対決はくまモンの圧勝で終わった。
ちなみに、くまモンと球界マスコットの絡みでいえば、2月に都内で開催された「くまモンファン感謝祭2016 in TOKYO」でくまモンとヤクルト・つば九郎が初共演。「東京音頭」「くまモン体操」を一緒に踊り、綱引き勝負を繰り広げる一幕もあった。
球界スターは、今やマスコットのイラストが描けて当たり前の時代となった。
まずは大谷翔平(日本ハム)。11月26日、北海道旭川市内で行われたトークショーで突如、日本ハムのマスコットであるB.Bのイラストを披露。コレが実に上手い、と評判になった。
一方、イラスト芸の第一人者といえば前田健太(ドジャース)。12月10日、広島市内で凱旋トークショーを開催した際、「カープ坊や」や「スラィリー」の絵を即興で描き、ファンにプレゼントする大サービスを行った。クオリティはさすがのメジャー級でした。
2015年からスタートした、つば九郎とドアラによるディナーショーはこのオフも大盛況。名古屋と東京でクリスマスディナーショーを行い、チケットは即完売となるほどの人気を呼んだ。
そして今月20日、今度は千葉・幕張でニューイヤーディナーショーも開催予定。幕張開催とあって、ロッテのマスコット、マーくんも参戦することが決まっている。あの非常識マスコット二体にどう対峙するのか、おおいに注目だ。
こうして振り返ると、2016年のマスコット事情は若干、大人しめだった印象も拭えない。それだけマスコット文化が成熟してきた証といえるかもしれない……と思ったら、最後の最後でつば九郎が「契約更改に遅刻で交渉なし!」という“らしい”ニュースで見事に締め括ってくれた。2017年はどんなパフォーマンスを見せてくれるのだろうか。
文=オグマナオト