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まさにプロ野球選手の鑑! ファンサービスに積極的な「神対応」選手列伝


 プロ野球はキャンプ真っ只中。キャンプ地には多くのファンが駆けつけているが、その目的のひとつはサインだろう。

 普段は本拠地で華々しい光を浴びながらプレーをする彼らに近付きサインをもらいたい! 野球ファンであれば少年から大人まで誰もが欲しいと思う直筆サイン。

 しかし、選手も人間。サインをお願いして快く書いてくれる選手もいれば、書いてくれない選手もいる。プロ野球ファンならば、一度は実感したことのあるコントラストだろう。

 そんな球界だが、最近は積極的にファンサービスに取り組む選手が増加中だ。今回、なかでも「神対応」(アイドル用語で極めて丁寧なファン対応のこと)と言われる選手をOBを含めて紹介したい。


王貞治(元巨人)


 球界を代表するレジェンドは、ファンサービスもレジェンドだと名高い。サインはできる限り断らない。もし時間がなかったとしても「すいません、今度はもう少し早い時間に待っていてください」と丁寧に頭を下げる姿に心打たれたオールドファンも多いという。

 その姿勢の原点は少年時代の思い出だ。東京・墨田区に生まれ育った王少年はもちろん巨人ファン。後楽園球場に観戦に訪れた際、当時小学生の王少年もスター選手たちにサインをもらおうと考えた。

 しかし、当時、家は経済的に豊かではなく、王少年は泥だらけのゴムボールしか持っていけなかった。選手に向かって無数の手が伸びる中、選手たちがサインするのは、やはり真っ白に光る色紙やボール。泥だらけのボールには目もくれなかった。

 次々と選手が去り、王少年の胸には悲しみが募っていったが、そこに現れたのが日系2世の韋駄天・ウォーリー与那嶺だった。与那嶺は嫌な顔一つせず、王少年のゴムボールにサインし、優しい笑顔を投げかけてくれたのだ。

 王少年は大喜び。この思い出を深く胸に刻んで、自身が大スターになったあとも可能な限りサインに応じる姿勢を崩さなかった。確かにプロ野球ファンであれば「王貞治」のサインはすぐに頭の中で思い描くことができる。それだけ、分け隔てなくサインをし続けたということだろう。


木佐貫洋(元日本ハムほか)


 昨年、引退した木佐貫もファンサービスのレジェンドだ。サインを断らないことはもちろんだが、木佐貫は試合前など時間がなくてサインができないことに頭を悩ませていた。せっかくサインをもらいに来ていただいているのにどうすればいいのか……。

 そこで木佐貫は事前に自身の野球カードに1日50枚ずつ、丁寧にサインをし、1枚ずつカードスリーブに入れて持ち歩き、それを配ったのだ。野球カードとカードスリーブはなんと自腹である。

 今年からは巨人でスカウトを務めるが、少年時代に木佐貫のカードをもらった有望選手と出会う日も近いかも知れない。


山崎康晃・三浦大輔(DeNA)


 現球界で「神対応」といわれる選手の代表格がDeNAの山崎だ。時間の許す限り、笑顔でサインや写真撮影に応じることで有名。他球団のユニホームを着た少年やファンにすら真摯に接し、ファンをメキメキと増加させている。今年のバレンタインデーに球界暫定トップの370個ものチョコレートを集めたのも納得できる。

 また、番長・三浦大輔もファンにとっては現人神の域。キャンプでの即席サイン会は最後の一人まで。宿舎に返信用封筒付きで届いた色紙やカードには必ずサインをして返す。

 サインのネットオークション転売が問題になったとき、コメントを求められた三浦は「価値がなくなるぐらい書きまくればいいじゃない」と笑い飛ばした。プロ野球選手の鏡たる名言だ。


まだまだいるぞ「神対応」選手


 続々と出てくる胸の熱くなるエピソード。近年はSNSの発達もあり、「神対応」選手がどんどん評判になる時代だ。最近では亀澤恭平(中日)がすこぶる高評価を得ている。中日は一時はほとんどサインをしない「塩対応」として、一般紙のコラムでも苦言を呈されるほどだったが、ファンサービス積極派の平田良介が新選手会長に就任し、どう変わっていくのかにも注目したい。

「勝利こそが最高のファンサービス」という考え方もあるが、やはりファンからすれば、サインや写真は一生の宝物。いくら勝ったとしても移動中終始イヤホンを付けて、聞こえないフリをするのは“紳士”の行いとしてはいかがなものだろうか。

 先輩後輩、そしてプロ野球選手と少年。世代を超えてファンサービスの伝統は受け継がれていく。


文=落合初春(おちあい・もとはる)

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