先週(7月26日〜31日)の広島は、猛追する2位・巨人、初のCS進出を目指し勢いづく3位・DeNAとの上位直接対決だった。
しかし、その初戦の巨人戦でエース・ジョンソンがまさかの乱調。4回4失点で負け投手となってしまう。
その2日後のDeNA戦では、リーグトップの12勝を挙げる大活躍を見せている野村祐輔がまさかの8失点。
次戦の先発は、これまで何度もチームの危機を救ってきたベテラン・黒田博樹。しかし、その黒田の力を持ってしても負の流れは止められず、6回4失点で敗戦投手となってしまう。
ここまでチームを支え続けてきた、3本柱が立て続けてKOされる様は、独走しているとはいえ、負け慣れている広島ファンからしたら心中穏やかではない。
優勝をするためには、3本柱の復調は不可欠。その上で疲れの見えてきた投手陣を救う救世主の出現が必要だ。
ほぼ手中にしている優勝へ向けて、ファンは最後のスパートをかけるための救世主の出現を待ち望んでいる。
救世主として期待したい筆頭は、巨人戦で復活を果たした福井優也だろう。昨シーズンは、低迷するチームを引っ張る活躍を見せるも、今シーズンは不調にあえいでいた。
投手キャプテンに任命されながら、躍進するチームの輪に入れずにいたことは歯がゆかったはず。この危機的状況で活躍することができれば、昨シーズン以上の喜びを得られるのは間違いない。誰もが認めるそのストレートで、ファンを唸らせてほしい。
続いて期待がかかるのは、九里亜蓮だ。今シーズンは主にロングリリーフで奮闘し、チームに貢献している。
5月に一度ローテーション入りを掴みかけたが、無念のローテーション剥奪。しかし、ここに来てローテーション投手の負傷により、再び先発のチャンスが巡ってきた。このチャンスを掴むか否か、それがチームの命運を少なからず握っている。
九里と言えば、キャンプでの投げ込みが1つの個性となっている。
米国人の父譲りの頑丈な身体と、厳しさで知られる亜細亜大で養った強靭な精神力。
この2つを併せ持つ、心身ともにタフな九里だからこそ、投げ込みが可能なのだ。賛否ある調整だが、夏場乗り切るスタミナは、春のキャンプでの投げ込みが物をいうはず。今こそ九里の力の見せ所と信じたい。
そして、万年期待されながも殻を破れず、今期はまだ1軍登板を果たせずにいる今井啓介にも期待したい。
今シーズンは2軍でリリーフに専念。チーム2位の23試合に登板し、防御率2.70とそこそこのピッチングを見せている。九里がローテーションに定着すれば、1枠空いた中継ぎに名乗り上げるチャンスだ。
これまで先発投手としてやってきた今井だけに、九里の務めていたロングリリーフのポジションはうってつけと考える。また、今井を推す最大の理由は他にもある。今井は例年、夏の終わりから秋にかけて神がかった投球を見せるからである。
初勝利を挙げたのは2009年9月18日。2012年9月1日には、初完封勝利。2013年のクライマックスシリーズでは、ファイナルステージの2試合に中継ぎとして登板、4イニングを四球1つのみの完璧なピッチングを見せたのは記憶に新しい。
時として見せる好投は、今井のポテンシャルの高さを物語る。ここ2年、出番は皆無に等しいが、夏から秋にかけて、チームの正念場に奇跡の投球を見せてほしいと願って止まない。
奇しくも母校・中越も2年連続で甲子園出場を決めた。これは燃えずにはいられないだろう。
悲願の優勝への道のりは決して平坦ではない。この先も苦戦が続くに違いない。そこで問われるのが、シーズン前半に出番を求めて奮闘していた選手たちがいかに力を発揮するか。そこかかっている。
最後のスパートを見せ、大願成就となることを大いに期待したい。
文=井上智博(いのうえ・ともひろ)