決まれば一気にチャンスを広げ、チームに勢いをもたらす盗塁。しかし、一歩間違えれば、相手に流れを渡しかねない諸刃の剣だ。
ここでは、盗塁刺で「一歩間違えて」アウトになってしまった「盗塁死王」を見てみたい。
現在、「盗塁死王」は4人が失敗5回で並んでいる。
セ・リーグは田中広輔(広島、成功:10回)と桑原将志(DeNA、成功:4回)。パ・リーグは柳田悠岐(ソフトバンク、成功:8回)と上林誠知(ソフトバンク、成功:5回)。
ソフトバンクからは2人がランクイン。優勝予想の大本命に挙げられながら、イマイチ流れに乗れないが、その一因となっているのかもしれない……。
続いては、野球の華・本塁打に関する珍記録。本塁打がチームの勝利につながらない、つまり本塁打を放ってもチームが負けてしまう「空砲記録」の持ち主をピックアップする。
セ・リーグはバレンティン(ヤクルト、総本塁打数:7本)が「空砲5本」で1位。4月16日のDeNA戦では2本塁打を放ったが、ヤクルトが敗れたため「空砲2本」を1日で挙げる結果となった。
総本塁打数7本に対して「空砲5本」というバランスを見ると、今季は、「バレンティンが本塁打を打つとチームが負ける」という呪いがかかっているのかもしれない……。
パ・リーグは、T-岡田(オリックス、総本塁打数:10本)が「空砲5本」で単独トップ。ただ、10本塁打のうち5本は勝ちにつながった本塁打。空砲とイーブンなので、T-岡田が本塁打を打った試合は、最後まで勝敗がどちらに転がるかわからないスリルを秘めている、といえるかも?
投球術の基本の1つである緩急の使い分け。緩急の差で打者のタイミングを狂わせれば、アウトに打ち取れる確率は上がる。
この緩急に着眼して「緩急王」を探してみた。
セ・リーグの緩急王は岡田明丈(広島)。最高球速155キロに対し、最低球速は93キロ。実に62キロもの球速差があった。先発として3つの貯金(4勝1敗)を作っているのも納得できる。
一方、パ・リーグの緩急王は西野勇士(ロッテ)。こちらは岡田にやや劣るものの、最高球速151キロに対し、最低球速93キロで球速差は58キロ。
しかし、先発転向が裏目に出たのか、援護してくれない味方打線のせいなのか、防御率5.23と低迷。緩急という武器をなかなか生かせないでいる。
目に触れる機会が多い打者の得点圏打率。一方で投手の「得点圏被打率」は、あまり表に出てくることがないので、誰がピンチで打たれているのかピンとこない方も多いだろう。
防御率を見ればおおよその目安はつく……という意見もあるだろうが、得点圏被打率1位の投手を調べてみると、いろいろと気になることが出てきたので紹介したい。
セ・リーグの1位は、得点圏被打率.323の石川雅規(ヤクルト)。規定投球回数達成者のなかでワースト1位の防御率4.87を記録しているのも、致し方ないところだ。
被本塁打もワースト1位の9本。しかもホームの神宮球場で8本塁打を献上するという「ホームに泣かされている投手」の代表格といえる。
パ・リーグの1位は、石川を上回る得点圏被打率.385を挙げてしまった有原航平(日本ハム)。
春先はチームの打線の状態が最悪だったため、「援護してもらえないうちにしびれを切らして打たれる」という悪循環を起こしているのかと想像した。しかし、援護点は4点台と悪くない。となると、相手チームに研究されて打ち込まれているのかもしれない。気になってしまう……。
さらに気になるのが、得点圏打率.500の近藤健介(日本ハム)と対戦せずに、この得点圏被打率を記録してしまっている点。近藤にカモられて、数字が悪くなっているなら諦めもつくのだが……。今季の有原は重症かもしれない。
ア・ラ・カルトとして4つの「珍メニュー」を提供したが、お腹はいっぱいになっていただけただろうか。
個人的には「最多空砲記録」が傑作だった。「打ったら負ける」と言っているようなものなので、表に出しにくい記録の筆頭候補のはず。
しかしそれを知っていれば、いざひいきのチームと空砲王が対戦したときに、縁起をかついで、逆に「打て!」と思いたくなるだろう。肉を切らせて骨を断つ的な発想だ。
今後も気になる記録を見つけては、レポートしていこうと思う。楽しみにしていただきたい!
(成績は5月22日現在)
文=森田真悟(もりた・しんご)