球速の話題といえば、メジャー復帰を目指し、マイナーリーグで調整中のダルビッシュ有(レンジャーズ)が先日、自己最速タイの158キロを計測。フリー打撃では161キロが出た、という報道もある。リハビリ段階でこの投球なのだから、今季、大谷翔平(日本ハム)を抜いて日本人最速記録を打ち出すかもしれない。
だが、世界にはまだまだ上がいるもの。999キロはさすがに難しいが、今季ヤンキースに所属するアロルディス・チャップマンは最速105マイル(約169キロ)。測定器によってばらつきがあったために参考記録とされているが、2011年には106マイル(約171キロ)を計測したこともある。
また、投手の球速ではないが、今年4月20日のヤンキース対アスレチックスで「170キロが出た!」と話題になった。ヤンキースの外野手、アーロン・ヒックスが本塁へ返球した際に105.5マイル(約170キロ)を記録した、と大リーグ公式サイトが伝えたのだ。
この数値は、大リーグ機構が導入しているデータ解析システム「スタットキャスト」が計測したもの。昨年9月にヒューストン・アストロズの外野手、カルロス・ゴメスが記録した103.1マイル(約166キロ)を上回る“野手最速記録”だった。
チャップマン、そして今年ヒックスが示した記録を見る限り、「170キロ」という数字は決して夢物語ではない、といっていいのではないだろうか。
ところが、だ。さすがはベースボールの国、アメリカというべきか、過去にはもっと速い球を投げた人物がいた、とされている。1950年代後半から1960年代中頃にかけてマイナーリーグで投げた左腕、スティーヴ・ダルコウスキーだ。
ダルコウスキーにまつわるエピソードとしては、最後の4割打者として有名なテッド・ウィリアムズ(元レッドソックス)が一度だけオープン戦で対戦。あまりの速さにバットが出ず、後ろに下がってボールを見送ることしかできなかった、という逸話がある。
また、ダルコウスキーの球を実際に受けた人物のコメントとして、チームメイトだったカル・リプケン(※2632試合連続出場したカル・リプケンJr.の父)のこんな言葉がある。
「120マイル(約193.キロ)は出ていた」
ただ、ダルコウスキーはコントロールが悪かったため、一度もメジャーリーグのマウンドに立つことはできなかった。速い球を投げられるだけでは活躍できない、メジャーの厳しさを示しているといえるだろう。
さて、いよいよメジャー復帰のカウントダウンが始まった、といわれるダルビッシュ。目指しているのは最高速度ではなく平均速度のアップ、といわれているが、果たしてどんな球を投じてくれるのか!? 故障明けだからこそ無理はせず、でもやはり、我々を驚かせてほしい。
文=オグマナオト(おぐま・なおと)