DeNAファンでなくとも、「I ☆ YOKOHAMA(アイラブヨコハマ)」というフレーズを聞いたことがあるだろう。近年のプロスポーツビジネスの成功モデルと評されるDeNAは、このキャッチフレーズの下で街ぐるみの徹底したPR展開を行い、果ては横浜スタジアムの運営会社の買収までやりきった。
これらの取り組みによって、近年のセ・リーグにおける記録的な観客動員上昇率を実現したのだ。
筆者は長年、ベイスターズのファンクラブに入会していた。会員であることがファンであることの証だと思っていたり、特典が目当てだったりと、そういう理由でなんだかんだと会員であり続けた。
だが、大ブレイクを果たした2016年シーズンを終え、自然と2017年のファンクラブへの加入をやめることにした。
はなはだ個人的な理由だが、ファンクラブ会員を継続しなかった理由は簡単。試合をなかなか見ることができなくなってしまったからである。横浜スタジアムから1時間半かかる地域に住む筆者としては、いつもガラガラだった横浜スタジアムの頃は、仕事が終わって駆けつけても、ゆったり観戦することができた。
だが現在は、常にソールドアウトに近い状態。なかなか横浜スタジアムで生観戦できなくなってしまい、特典のチケットは全く消化できなくなった。
要するに、地元のファンの盛り上がりの裏で、離れたところに住むファンにはファンクラブの会員であることのインセンティブが薄くなってしまったのだ。愛する球団だから、試合が満員になってファンが増えているのは単純に嬉しい。しかし、ちょっと遠くへいってしまった感覚でもある……。
思えば大昔、巨人ファンだったときは、巨人戦は常にプラチナチケットだった。試合を見に行くという行為自体に緊張感があったものだ。ふらっと足を伸ばして観戦できなくなった今の横浜スタジアムの状況は、人気球団となったDeNAファンの宿命なのだろう。
球団成長の立役者・池田純社長はCS終戦をもって退任した。来シーズン以降もこの盛り上がりがキープされるのか。少し不安だが、温かく見守っていくしかない。
筆者が望むことを最後に挙げると、まずは横浜スタジアムの収容人数の拡張を急いでほしい。さもないと観客動員数の増加にストップがかかってしまう。そして個人的な希望になるが、また、気が向いたら観戦しに行ける横浜スタジアムに戻ってほしいのだ。地元以外のファンでも気軽に楽しめる状況になったら、再び、ファンクラブに入会したいと思う。
文=元井靖行(もとい・やすゆき)