菊地 加藤“デスク”としての腕の見せどころといえば、報知新聞でのデスクコラムがあると思います。
加藤 はい。「Gペン」というコラムを書かせていただいています。約800字の中に自分の色を出しつつ、どうやってひとつの読み物にするか。僕だけじゃなく、コラムを担当する人間は、コラム当番日ってみんな気合いが入ってますね。
菊地 記者の顔が見えるコラムというか。
加藤 そうですね。「Gペン」というと、白取晋さんという、巨人に対して厳しい筆致で人気だった方の系譜を受け継いでいるんですね。だから僕も、時には采配に異議を唱えるようなものを書くこともあるんですが、賛否どちらになるにせよ、何か印象に残るようなものを書きたいな、と常々思っています。
菊地 プロ野球というのは、エンターテイメントの部分と、スポーツ競技としてのマジメな部分、両方を併せ持っているものだと思います。スポーツ新聞という媒体は、そのさじ加減が難しいというか、やっぱりエンタメの部分を刺激する媒体なんでしょうか?
加藤 これは皆さんの感覚とは違うかもしれませんが、僕自身は「プロ野球は文化だ」と思って、日々接しています。確かに優勝を争い、男と男の決闘である、っていうのは大前提です。ただやっぱり、人間ドラマであり、栄光と挫折、嫉妬、色んなものがうごめく公共のカルチャーだと思うんです。だからこそ、グラウンドの中だけじゃなく、グラウンドの外で何が起こっているかも大事にしたいな、と。
菊地 野球の周辺まで含めて考えていく。
加藤 たとえば僕、応援団が大好きなんですよ。パ・リーグ担当時代、西武ドームのプレスルームから見ていると、つい外野スタンドの応援にも目が行っちゃったりして。ビジターチームの客席を見ながら「あれ? 今日トランペット少ないな」とか思っていると、3回ぐらいに来るんですよ。あー、仕事だったのかな? とか想像して。
菊地 だんだん応援が盛り上がっていくんですよね。
加藤 札幌ドームのオリックス応援団だと、初回はトランペットがいなくて、太鼓と応援歌だけの場合があるんです。で、5回ぐらいからフルメンバーが揃って応援がますます盛り上がる、とか。そういうのも含めて全部が愛すべき対象なんです。スポーツ記者として、そういったプロ野球を取り巻くすべてにスポットを当てていきたい。そんな視点をこれからも大切にして、日々の仕事に取り組んでいきたいと思っています。
■加藤弘士(かとう・ひろし)
1974年4月7日、茨城県水戸市出身。水戸一高ではプロレス研究会に所属。慶應義塾大法学部法律学科を卒業後、1997年に報知新聞社入社。広告局、出版局を経て、2003年からアマ野球担当。アマ野球キャップや、野村克也監督、斎藤佑樹の担当などを経て、2014年より野球デスクとなる。
■ライター・プロフィール
オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。「エキレビ!」、「AllAbout News Dig」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』(新紀元社)では構成を、『漫画・うんちくプロ野球』(メディアファクトリー新書)では監修とコラム執筆を担当している。近著に『福島のおきて』(泰文堂)。Twitterアカウントは@oguman1977(https://twitter.com/oguman1977)