まずは生え抜き代表としてT-岡田を挙げたい。今季は開幕から一度も2軍に落ちることなく、本塁打ランキングでも上位に位置するなどコンスタントな活躍を見せている。
2010年に33本塁打で本塁打王を獲った頃の輝きを取り戻したかのようだ。今季の起用法で興味深かったのは「1番打者」としての出場。8月5日の日本ハム戦からこれまでに14試合で1番に座り、打率は1割台だが、四球は10個とほぼ毎試合出塁している。
プロ入り後……どころか野球人生で初のリードオフマンということで、戸惑いもあるかと思うが、1番に適応したらとてつもない強力打線になることは間違いない。福良淳一監督とT-岡田はめげずにチャレンジしてほしい!
続いては、オリックス3年目で移籍後の最高成績をマークしそうな中島宏之。
打率.289、9本塁打、48打点は、一塁やDHという負担の少ないポジションに就いていることを考えると、やや物足りない成績に映るが、主な起用が6、7番なので、下位打線の要としては十分といった感もある。
1999年のいてまえ打線では、吉岡雄二が主に7番・一塁を担い、打率.276、13本塁打、57打点という成績を挙げているので、中島にはその役目を期待したい。
ちなみに、福留孝介(阪神)はメジャーから帰ってきて以降、年を追うごとに成績が良化しているので、慣れというのは大事だとあらためて感じた。中島の今後もまだまだ楽しみだ。
オリックスに移籍後、2年連続で約50試合の出場に留まっていた小谷野栄一。今季は1度登録を抹消されたが、ここまで116試合に出場し、これまでとは違う働きを見せている。
日本ハム時代の2010年には打点王を獲得した小谷野が、復調傾向にあるのは心強い。しかも今季、主に座る5番は、「いてまえ打線」でいうと礒部公一の打順だ。
礒部といえば近鉄時代の2001年に17本塁打を放ち、95打点を叩き出したが、小谷野も2010年に16本塁打で109打点を稼いだことがあり、タイプ的には通じるものがある。
古巣・日本ハムのビッグバン打線には、年齢的に間に合わなかったが、いてまえ打線の復活に貢献して、日本プロ野球の「強力打線史」にその名を刻んでほしい。
プロ野球史を振り返ると、1990年代以降でもビッグバン打線、横浜(現DeNA)のマシンガン打線、ダイエー(現ソフトバンク)のダイハード打線など数々の強力打線が登場し、野球界を彩った。
2001年に不安の多い投手陣を抱えながらパ・リーグを制したいてまえ打線は、その最たる例。野球界の常識を覆した歴史的打線なので、忘却の彼方に消え去らせてしまうのは実に惜しい。
それだけに今回取り上げた3人が縁の下の力持ちとなっての新生いてまえ打線の誕生を切に願う。
(※成績は9月19日現在)
文=森田真悟(もりた・しんご)