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ロッテ観客増の裏に“伝説の応援歌”の復活あり。なぜ封印されていたのか? その応援事情に迫る


 今シーズン、スタートダッシュに成功したロッテ。常勝・ソフトバンクの後塵を拝しているものの、6月2日時点でパ・リーグ2位。前評判をくつがえして貯金7をこしらえている。

 また観客動員数も絶好調。29試合終了時点で1試合平均20,051人。昨年の同時点での動員数は平均17,478人。約2,500人もの動員アップに成功しているのだ。

 その理由はなんなのか? それはロッテが“強いから”だけではない。今季は伝説の応援歌が帰ってきたのだ。

楽しかった西武ドーム外野席


 2005年の日本シリーズ、ロッテファンの応援は迫力を帯びていた。阪神を33対4で公開処刑したあの日本シリーズで、ロッテの熱狂的な応援は地上波に乗り、センセーショナルなメジャーデビューを果たしたのだ。

 当時高校1年生で阪神ファンだった筆者も、その迫力に目と耳を奪われた。そのグルーブ感、ポップさ、スタイルに惹かれ、翌年からロッテファンに寝返った。

 そして大学生になって上京、待ちに待った念願の外野参戦を果たした。当時住んでいたのは所沢。西武ドームの外野芝生席はまさに“熱狂的”と表現するにふさわしかった。

 攻撃時にはポール側に一斉に固まって跳びはね、得点時には『エリーゼのために』に合わせて「モッシュ」。男子大学生というのは、とかくフェスに行きたく、ライブに行きたく、モッシュがしたい生き物。脳みそから快楽物質がドバドバとあふれ出した。

 また、友人・知人を誘いやすかった。「ロッテの応援楽しいよ」。その一言で球場に連れて行き、何人もの野球観戦素人をロッテファンへと引きずり込んだのだった。

・サブロー応援歌
・福浦和也応援歌
・レイジーボーン
・燃えろ千葉ロッテ
・スキンヘッドランニング
・エリーゼのために

 当時のキラーチューンである5曲が今季、満を持して復活したのだ。思い出語りが過ぎたが、多くのロッテファンが「待ってました!」と歓声を上げ、誘い合わせて球場に大挙している。


なぜ封印されていたのか……?


 先述のように快楽物質がドバドバあふれ、他球団ファンのみならず、他球団の選手にも怖れられていた伝説の応援歌。それらが封印されたきっかけにも触れておきたい。

 2009年シーズン終盤、ロッテは御家騒動下にあった。この年のロッテは開幕前からボビー・バレンタイン監督の解任騒動が起こるなど、穏やかではない様相だった。

 2005年の日本一の立役者であるバレンタイン監督。ファンからは続投の声もかなり多かった。しかし、フロントは首切りを断行しようとし続けたため、9月にBクラス入りが決まると千葉マリンスタジアム(当時)の外野席に過激な横断幕が揚げられるようになった。

 フロントの名前を挙げて、「全員死刑」などかなり苛烈なものがあったのも事実だ。

 それに噛み付いたのが西岡剛(現阪神)だった。9月26日、ヒーローインタビューで西岡はお立ち台を降り、「子どもたちの夢を壊さないでください。横断幕を下げてください」と外野席に向けて、アジテーションを打ったのだった。

 これに怒ったのは横断幕を掲げていた応援団の中核メンバー。彼らは西岡をフロントの犬と見なし、翌日、西岡の応援をボイコット。「よっ!偽善者www」「フロントは僕らの夢を壊しました」など、強烈な横断幕を出したのだ。

 それまでのロッテの応援を創り上げてきたパイオニアだった彼らも、その行為はさすがに一般ファンの共感を得ることはできず、大問題となり結局解散。新応援団立ち上げに際して、旧応援歌は封印されたのだった。

なぜ今季、伝説の応援歌は復活したのか?


 新体制となった2010年から昨季まで、新応援団の団長はジントシオ氏が就任。同氏は2004年までロッテの応援をリードしてきた人物で空白となった応援を見事に埋め、QVCマリンフィールドのライトスタンドを再建したのだった。

 昨季を最後にそのジントシオ氏が引退。今季から応援団長に高橋慎氏が就任した。

 高橋氏は「マリーンズの歴史を繋げる」と語り、賛否両論の中、旧応援歌の復活を決断。外野席に再び、あの頃の熱量を取り戻そうとしている。


 6月7日(火)からQVCマリンフィールドで阪神と3連戦。阪神には封印のきっかけともなった西岡がいる。複雑な事情、心情が交わる一戦。特段、旧応援歌に注目したくなる。


文=落合初春(おちあい・もとはる)

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