メジャー挑戦を表明していた松田宣浩(ソフトバンク)が、昨年末の12月24日にホークス残留を発表。新たに4年16億円の契約を結び、会見では「生涯ホークス」宣言をしてファンを喜ばせた。
1度はメジャー行きを表明しながら、結局、「元サヤ」に収まったケースは、正直な話、チーム内に全くしこりが残らないかといえば嘘になると思う。
2015年は外野のみの出場だった同じチームの江川智晃が、三塁手用グラブを発注して来季に挑むとの報道があった。
しかし松田の残留で、江川の三塁手転向の可能性が低くなったことは事実。
契約更改の時、そのことを聞かれた江川は、「(グラブを)キャンセルしようかな」と苦笑いしながら発言したという。
昨季は厚い選手層に阻まれて、僅か25試合の出場に留まった江川。「松田さんが抜けた後のサードは俺が守る」と、奮起していた矢先の松田残留は、二代目「熱男」の就任を目指して「アツオー」のコールを練習していたかもしれない江川にとっては複雑な心境だろう。
過去を振り返ると、メジャー挑戦を表明して残留した主力選手は、前年以上の成績を残していないケースが多い。
記憶に新しいのは、鳥谷敬(阪神)だ。2014年シーズンは144試合フル出場し、自己キャリアハイとなる打率.313をマーク。クライマックシリーズ(CS)では巨人を破り、日本シリーズに進出した鳥谷は、オフに海外FA権を行使。
連日、様々な球団名が報じられたものの、条件面で折り合いがつかず阪神に残留した。
鳥谷の海外FA宣言年と残留年の成績を比べてみると
2014年
144試合/打率.313/8本塁打/73打点
2015年
144試合/打率.281/6本塁打/42打点
前年よりも数字を落とし、CSでは巨人に敗れて、2年連続の日本シリーズ出場はならなかった。
同じくメジャー移籍を宣言した後に、元サヤに戻った選手と言えば中村紀洋(当時、大阪近鉄バファローズ)。2002年オフに移籍先を模索したものの、結局バファローズに残留した経緯を持つ。
2002年
140試合/打率.294/42本塁打/115打点
2003年
117試合/打率.236/23本塁打/67打点
中村も前年よりも数字を落とし、チームも2002年の2位から3位と、順位を落とした。
2015年の松田は143試合フル出場して、打率.287を記録。35本塁打、94打点は自己キャリアハイの数字である。
1度は海を渡る姿を夢見た松田。再びホークスの「熱男」として、前年並みの成績を残すことができるのか?
それともうひとつ。個人的には、江川がキャンプに三塁手用グラブを持っていくのか。それとも発注をキャンセルしたのかも知りたいところだ。
文=溝手孝司(みぞて・たかし)
札幌在住。ライター、イベント関連など、スポーツ関連の仕事を精力的にこなしている。北海道生まれなのに、ホークスファン歴約40年。99年ダイエー初Vを福岡ドームで観戦するなど、全国を飛び回りながら、1軍2軍問わずプロ野球を追いかけている。