今秋のドラフトで大学生野手の上位候補として名前が挙げられるのが、中京学院大のショート・吉川尚輝(写真)だ。
大学選手権初出場となる中京学院大は、大会初日に日本文理大と対戦。吉川は初回に先制打となる三塁打を放つと、守備でも好守を見せて2-0とチームの全国大会初白星に貢献した。さらに翌日の2回戦・桐蔭横浜大戦では4安打の固め打ちと2盗塁と自慢の俊足も見せつけ、神宮のネット裏に集まったプロのスカウトたちの注目を集めた。試合も3-2と競り勝ち、初となる全国の舞台でベスト8入りを果たした。
岐阜・中京高時代は甲子園出場は叶わなかった吉川だが、中京学院大入学後は2年春に首位打者と盗塁王を獲得。その後は大学侍ジャパンの代表候補合宿にも招集され、三拍子揃った内野手として知られる存在へと成長していく。
この春は岐阜リーグMVPを獲得するなどチームの優勝に貢献。リーグ戦通算116安打は、大学の先輩である広島・菊池涼介の持つリーグ記録を塗り替えた。
初日の第1試合、神宮球場で中京学院大・吉川がその実力を見せ付けていた時、東京ドームでは中央学院大の2年生ピッチャー・石井聖太がスコアボードに0を並べ続けていた。
第一工業大戦に先発した石井は、初回を3者連続三振で抑える立ち上がりを見せると、テンポ良くキレのある直球を投げ続けていく。7回を終えてランナーをひとりも出さない完全試合のペースで進んでいたものの、8回一死後に初安打を許した。しかし、崩れることなく最後まで投げ続け、毎回の14奪三振、2安打完封と、初の全国舞台で躍動した。
この日の東京ドームの第4試合・福井工業大対愛媛大戦では、福井工業大の2年生投手・谷?龍が先発。11奪三振、1失点完投で勝利を収めた。くしくも2年前、大学選手権で同じ2年生投手として一躍注目を集めたのが、創価大の田中正義。この2人の今後の成長が楽しみだ。
3年ぶり、31回目の大学選手権出場となる東北福祉大は、同校野球部OBで、現役時代は西武で活躍した大塚光二監督が、初めて全国大会で采配を振るった。
昨夏から野球部監督に就任した大塚監督は、試合前のシートノックでは外野ノックを打つ。試合中は守備から戻ってくる選手たちに対してベンチから率先して飛び出し、積極的に声を掛けていた。試合は先発の城間竜兵が6回無失点の好投を見せ、6-0で東農大北海道オホーツクに勝利。
大塚監督率いる東北福祉大はキャプテンの長坂拳弥、4番打者の井澤凌一朗など今秋のドラフト候補を擁し、上位進出が期待される。
文=武山智史(たけやま・さとし)