プロ野球選手名鑑を発行しているのは日刊スポーツ、スポーツニッポン、ベースボール・マガジン社、廣済堂出版、日本スポーツ企画出版社、コスミック出版、宝島社、ベースボール・タイムズ、野球太郎(イマジニア社・ナックルボールスタジアム)の9社。そのなかで7つの選手名鑑の表紙は、各球団の選手が1人ずつ登場しているタイプ。表紙に起用されることはイコール、球団の顔というべき選手と言っても過言ではない。
(※『野球太郎』の選手名鑑の表紙は顔写真でなくイラストとなっているが、各球団1人ずつ登場という点ではほかと一緒になので、今回の分析では同じ扱いとする)
今年、その7つの選手名鑑のすべての表紙に載っていた選手が2人いた。1人は昨季のパ・リーグMVPの「二刀流」大谷翔平(日本ハム)だ。昨年の日本ハムの顔ぶれを見ると、1誌だけが中田翔となっていたが、今年は投打で活躍し、チームの日本一に貢献したため満を持しての「表紙完全制覇」となった。それだけにWBC出場辞退が惜しまれる……。
もう1人は、2年連続トリプルスリーの山田哲人(ヤクルト)。選手名鑑の表紙に山田が登場するようになったのは2015年からだが、実は昨年に続く2年連続の名鑑表紙完全制覇だった。そういう意味では、大谷よりすごいと言える。
なお、惜しくも「表紙完全制覇」とならなかったのが、昨季のセ・リーグ二冠王・筒香嘉智(DeNA)だった。ちなみに筒香の顔写真は昨年までは真顔だったが、今年は笑顔のものが多い。
25年ぶりのセ・リーグ制覇を果たした広島に目を向けると、昨年は6つの選手名鑑の表紙に黒田博樹が登場していた。しかし、黒田は現役を引退。今年はリーグMVPとなったベテラン・新井貴浩、一躍ブレークを果たした鈴木誠也、攻守で存在感を発揮した守備の名手・菊地涼介と3選手に分かれた。
余談だが、昨年のセ・リーグMVPを決める投票数は1位が新井、2位が菊地、3位が鈴木。こちらでもこの3人で票を分けあった。
また今年は、移籍してきた大物選手が表紙に登場するケースも見られた。糸井嘉男(阪神)、岸孝之(楽天)、陽岱鋼(巨人)が、それに該当する。過去にも2014年に涌井秀章(ロッテ)、2015年に黒田博樹、松坂大輔(ソフトバンク)が登場した前例がある。
そんななか、ルーキーながら表紙に登場していたのが田中正義(ソフトバンク)と柳裕也(中日)。ともに新人王の有力候補と目されているが、彼らへの大きな期待が表紙に現れた形だ。
プロ2年目の選手ではセ・リーグ新人王の高山俊(阪神)、昨年オフに台湾で行われたアジアウインターベースボールリーグ(AWB)でも豪打を見せつけたオリックス・吉田正尚(オリックス)、8勝を挙げ、チームのCS進出に貢献した今永昇太(DeNA)と期待の若手選手たちも登場している。
なお、今年の選手名鑑の表紙にもっとも多くの選手が登場していた球団は、オリックスの6名(金子千尋、西勇輝、平野佳寿、安達了一、吉田正尚、T-岡田)。昨季はリーグ最下位という結果だっただけに、「決め手を欠く」という点が人選にも反映されたのだろうか。
文=武山智史(たけやま・さとし)