ドラフトの醍醐味といえば活躍予想。近年では源田壮亮(西武)や近本光司(阪神)などが1年目から「想定以上」の活躍を見せた選手といえるだろう。
ドラフトファンやスポーツライターはココが「ドヤ顔」ポイントだ。指名前から推していた選手がプロ野球で活躍すれば、「どうだ!」「俺の読みは当たっていた」と言いたくなる。まさに自分の手柄(!?)なのだ…!
「私のイチ推し」から出世を遂げた選手を手前味噌ながら堂々と紹介したい。
ドラフト候補視察の観戦ノートを見返してみると、どうしても「感動」が薄れていっていることがよくわかる。球速、球種、フォーム−−。書き手になってからは「ドラフトにかかるか」「記事になりそうな特大の長所があるのか」。どうしても斜めの視点になってしまう。
そんななか、試合を見ていて“腰が浮いた”のは、早稲田大2年当時の大竹耕太郎(現ソフトバンク)だ。済々黌高時代も甲子園で投げており、テレビ画面で投球を見たことはあった。「いい投手だな」とは思ったが、ほぼノーマークだった。
しかし、2015年秋の東京六大学リーグ戦、初めて“生”で大竹を見たとき、筆者は一瞬でファンになってしまった。ピッチャーを見て前のめりになったのは、ほぼ唯一と言ってもいい。
現在、183センチ85キロ。大学時代の大竹はもう一回り細かった。身長は十分にありながら、ストレートは数字の上では「こない」。その代わりに抜群の緩急があった。
投球の入りが変化球でも緩まない。バックネット裏から俯瞰で見れば、ほとんどの投手は何となく球種が読めるのだが、大竹はその“匂い”をまったく感じさせない。
スクッと背筋を伸ばし、ストレートでも変化球でも途中までは「150キロがいくぞ」と言わんばかりの始動動作。いい意味でのハッタリが効いていた。もちろん、打者もそんな剛速球投手ではないと知っている。しかし、大竹はその違和感で相手打線、そして観客をも翻弄していた。
130キロ台のストレートも異様に「きている」ように見える。まさに星野伸之(元オリックスほか)の再来と言いたくなる投球だった。
残念ながら3年以降はケガに悩まされ、成績はついてこなかったが、実は2年秋も右ヒザを痛めていた。力ではなく技の投手。多少のケガはまったく問題ない。育成4位での指名は恐ろしいほどにお買い得に感じられた。
ルーキーイヤーからの活躍はご存知の通りだ。まさかここまで…とヒザを打つこともなかった。観客をもあざむく技がある大学生投手は大竹しか見たことがなかったのだから。
2017年のドラフトで猛烈に推しまくったのは、東晃平(オリックス育成/神戸弘陵高)だ。ドラフト当日も記者会見にお邪魔したぐらい。初めて見たのは、2017年3月の練習試合だった。
「腕の振りが見えない」
観戦ノートにはそう書き残されている。当時最速は145キロだったが、しなやかな腕の振りでストレートが伸びる伸びる。力任せの140キロではなく、柔の140キロ。140キロ台の高校生はゴロゴロいるが、柔の140キロが投げられる高校生は本当に稀有な存在といえる。
しかし、4月に腰を痛めてしまい、アピールチャンスを減らしてしまった。それでも驚異の回復力で夏の大会に間に合わせると、2回戦で市尼崎高を9回2失点で退け、3回戦では関西学院高に敗れはしたものの、140キロ台をビシビシと投げ込んだ。
確かにケガの影響はあったが、どちらかと言えばメカニックの部分ではなくスタミナ面。春のマックスを見ていれば「こんなもんじゃない」と断言できる内容だった。育成2位の順位はこちらもお買い得だった。
そして今年、2年目の東は頭角を現した。2軍の先発ローテに定着し、19試合で5勝7敗、防御率3.84。2軍ではチームトップの96回を投げた。高卒2年目、背番号「128」の投手としては上々の結果だ。
最速は148キロまで伸びているが、軽く投げた140キロそこそこのストレートもスパッと決まる。さらにプロに入ってから覚えたカットボールも威力を発揮し、抑えることにそこまでの力感を要しない。飄々と投げることができている。
そろそろ育成ではもったいない。支配下、そして1軍に昇格した暁には改めて「私は推していました」と声を大にして言わせていただきたい。
文=落合初春(おちあい・もとはる)