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広島の「捕手論争」は過去の話。會澤翼がついに覚醒。いつの間にか広島が捕手王国に?

広島の「捕手論争」は過去の話。會澤翼がついに覚醒。いつの間にか広島が捕手王国に?

 今季も広島が強い。開幕前は、エースにして精神的支柱だった黒田博樹の引退に加え、ベテラン・新井貴浩や石原慶幸の衰えも不安視され、昨シーズンほどの強さはないのでは、と懸念する声もあった。

 しかし、蓋を開けてみれば7月5日時点で、47勝27敗1分の貯金20。2位とのゲーム差は7と早くも独走態勢を築いている。

 この予想以上の強さは、47勝のうち逆転勝ちが26勝という驚異的な打力がものをいっている。

 しかし筆者は、劣勢でも一気に試合をひっくり返せる打力もさることながら、ベテラン、中堅、若手が揃った豪華な捕手陣が強さを陰で支えているのではないかと見ている。

ファン待望の男がついに正捕手奪取


 2年続けての躍進には、會澤翼の「正捕手」奪取が大きな原動力となっている
會澤は2014年に打率.307、10本塁打をマークし台頭。待望の“打てる捕手”としてファンから大きな期待を受ける。しかし、守備で精彩を欠く場面が目立ち、ここ数年は伸び悩んでいた。

 それが、今シーズンは捕手陣で最多の56試合に出場。攻守に安定感を見せ、昨年のベストナイン捕手・石原を制し、正捕手の座におさまっている。

 會澤が正捕手を奪取できたのは、打率.295と2014年以来のハイアベレージを残しているのが最大の要因だろう。広島捕手陣随一の打撃力を持つ會澤がスタメンに入ることで、打線に切れ目がなくなり、自慢の打線がより機能する。これは大きな功績だ。

 しかし、打撃力だけで手に入れられるほど、正捕手の座は甘くない。扇の要として、野手をまとめ、投手から信頼される守備力がなければ務まるポジションではないからだ。ましてや、正捕手を争う相手は守備面で絶大な信頼を得ている石原。2、3年弾き返され続けたように石原の壁を越えることは容易ではない。

 會澤が正捕手の地位に手にできたのは、打撃力だけを買われたのではなく、守備力が向上したからなのだ。今シーズン、會澤がスタメン時の先発投手の防御率は3.43と安定。昨シーズンの防御率3.94から改善されている。この数字は、配球面での成長を裏づけるものだ。

 また、ここまで捕逸はゼロ。2015年にはリーグ最多の8個の捕逸を記録するなど、最大の課題だった捕球技術にも大きな成長が見える。捕球では球界随一と言われる名手・石原と見間違えるほど、今シーズンの會澤の捕球は安定している。この守備での安定が打撃好調の呼び水にもなっているようだ。

バッシングを乗り越えて


 ここ数年間、スタメン時の勝率が石原と比べかなり低かったことから會澤はたびたび批判された。「配球が悪い、守備が悪い」というコメントもインターネット上で多く見られた。

 しかし、バッシングに屈することなく守備を磨き、正捕手を射止めつつある會澤の頑張りは賞賛に値する。

 いくつかのチームが捕手の世代交代に困難を強いられ低迷していくなか、石原が健在のうちに會澤へとバトンが継がれたことは、今シーズンだけでなく、今後の広島にとっても非常に大きい。

 現状での課題は盗塁阻止率の低さのみ。黄金時代を築くためにも會澤のさらなる飛躍に期待したい。


老け込むにはまだ早い


 一方で、長年守り続けた正捕手の座をついに明け渡す格好となった石原。

 捕球や盗塁阻止率にやや衰えは見えるが、キャリアを重ねて老獪さを増している。総合的な守備の技術は、まだ會澤より上といっていい。正捕手として活躍できるだけの体力もスキルも十分あるのだ。

 しかし、打撃で上回る會澤の守備が成長した今、世代交代を考えれば會澤を正捕手に据える方が、広島の未来にとって大きな意味があるのは明白だ。ましてや、それで結果が出ているのだから、ついに「来るべき時が来た」ということだろう。

 とはいえ、石原もここですんなりとは終われない。広島捕手史上初の1000本安打にも、あと14本に迫っている。1000安打を通過点として弾みをつけてほしい。

 長年、広島のホームベースを守り続けてきた経験は、大事な試合が続く夏場以降に発揮されるはずだ。ジョンソンをはじめ投手陣からの信頼は厚い。広島には石原の力がまだまだ必要不可欠だ。

 さらに、石原、會澤だけでなく、彼らに続く第3捕手の若手たちにも注目したい。磯村嘉孝は7月2日の中日戦でプロ初本塁打を放ち、少ないチャンスで爪痕を残してみせた。2軍に目をやれば、今シーズンの開幕1軍を勝ち取った船越涼太や、ルーキーながら非凡な打撃センスが光る坂倉将吾ら逸材が揃っている。

 彼ら若手が順調に成長すれば、広島の未来はとてつもなく明るい。空前の捕手王国を形成し、黄金時代を築くことを願ってやまない。


文=井上智博(いのうえ・ともひろ)

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