昨季、14年ぶりのセ・リーグ優勝を果たしたヤクルト。今季は30日現在、24勝29敗1分と最下位に沈んでいる。しかし、首位広島まで5.5ゲーム差と、連覇はまだ射程圏内だ。チームを救える若手はいるのか。そして、チームの将来を担うであろう、あの若手選手の現状を探ってみよう。
(記録はすべて5月30日現在)
チーム防御率がセ・リーグワーストの4.87と投手陣に悩まされているヤクルト。昨季、ケガからの復活を果たした館山昌平が再びケガで離脱し、ルーキーの原樹理も2勝を挙げてはいるが、防御率5.07と期待通りの成績とは言い難い。
2軍の成績を見ても、チーム防御率は3.82でイースタン・リーグの4位。規定投球回に達している投手もいない。そのなかで光るピッチングを見せているのが、7年目の平井諒だ。
帝京第五高から2009年ドラフト4位でヤクルトに入団した平井は、2012年に1軍初登板を果たした。その年は22試合に登板し2勝2敗1セーブ2ホールド、防御率5.68。2013年は7試合に登板したが、7月に右肩のクリーニング手術を行い、最近2年は1軍での登板がない。
昨季終了後には育成契約となり、肩の調子がよくないのかと思ったが、先日イースタンでの登板を見て驚いた。大きく振りかぶって、150キロ前後の速球を連発していたからだ。今季、イースタンで17試合に登板し勝敗はなく、2セーブ、防御率2.08。17回1/3を投げ、奪った三振は11個と三振を多く奪っていないが、球の速さやキレは「復肩」をアピールするには十分だった。決め球となる変化球に課題は残るが、速球派が少ないヤクルト投手陣の中で、そう遠くない時期に平井が支配下登録に戻っても不思議ではない。
平井の150キロを見た試合で、もうひとつ驚いたことがあった。
昨年のドラフト2位、廣岡大志のバッティングフォームが山田哲人そっくりになっていたのである。バットの立て方、左足の上げ方と山田が少し若返ったようだった。素質あふれるショートということで山田哲人2世とも言われるが、ここまで似るのかと驚いた。
成績は47試合に出場し、163打数32安打1本塁打、打率.196。三振が59個、ショートの守備でも9失策とプロの壁にぶつかっているが、高卒ルーキーとして多くの試合に出場していることはプラスになるはずだ。
廣岡が1軍の戦力となるのはまだ先だろうが、ここで山田哲人が1軍の戦力となるまでの過程を振り返ってみたい。
ルーキーだった2011年、レギュラーシーズンで1軍昇格はかなわなかった山田だが、中日とのクライマックスシリーズで史上初めて高卒ルーキー野手のスタメン出場を果たした。2012年、1軍での出場は26試合にとどまり、2013年もシーズン当初は2軍での出場が続いた。
当時の真中満2軍監督は、ファームの1番ショートで山田を起用していたが、5月上旬からは1試合ごとにショート、サード、セカンドとポジションを変えた。若手選手に様々なポジションを経験させることはよくあるが、1試合ごとにポジションを変える起用法は珍しい。そういった起用を経て、5月24日に山田は一軍に昇格した。その後の活躍は説明するまでもないだろう。
廣岡がどのように育っていくか。ヤクルトはどのように育てるのか。起用法にも注目しながら見守りたい。
文=京都純典(みやこ・すみのり)
1977年、愛知県出身。出版社を経て独立。主に野球のデータに関する取材・執筆を進めている。『アマチュア野球』(日刊スポーツ出版社)、『野球太郎』(廣済堂)などに寄稿。1軍はもちろん、2軍の成績もチェックし、分析している。