楽天が最優先で改善すべき課題は、失点の抑止とその削減だった。極端な投高打低が是正され、今と同じ状態に落ち着いた2013年以降、楽天は年々雪だるま式に失点を増やしている。
2013年の537失点を起点に604失点、612失点ときて、今季は654失点。田中将大(ヤンキース)の穴を埋めるのもままならない状況が続き、改善が急務になっていた。
ドラフトで指名した14人中、10人が投手という“投手大量指名”の背景には、前年ドラフトで獲得した9人(育成含む)中、8人が野手だったことに加え、2013年以降にドラフトで入団した投手13人中、数年で1軍の戦力となっているのが松井裕樹のみという寂しい状況もあった。
1位で“大学BIG3”ではなく、高校生No.1と評価する声も高かった藤平に向かったのは、“優れた高校選手を1位指名し育成する”という星野仙一政権以降の揺るがない方針の表れだ。
また、球団が真に勝負すべきシーズンを“2018年以降”に設定している戦略もあるのだろう。2017年はAクラス争いできる確かな基礎体力を養う。2度目の優勝を狙うのは、大谷翔平(日本ハム)のMLB行きが予想され、内川聖一らソフトバンク主力陣の高齢化が進む2018年以降、という戦略を描いていると見た。
1位の藤平に加え、2位の池田隆英(創価大)、4位の菅原秀(大阪体育大)、5位の森原康平(新日鐵住金広畑)ら、指名した投手の顔ぶれを眺めると、ある共通項に気づく。ストレートの最速が150キロを超える面々が多いのだ。
現在、1軍の主戦で、球威あるスピードボールを武器に打者を圧倒できる投手は、日本人では則本昂大ぐらいに限られてくる。
宮川将、古川侑利、小野郁といった若鷲が145キロ以上を見せるようになってきたが、とはいえ発展途上の段階だ。ピッチングの基本はストレート。そのストレートにこだわりを持った投手を中心に指名したといえそうだ。
一方、野手の支配下指名は2人にとどまっている。筆者は二遊間を守ることのできる即戦力内野手の指名があるのでは? と見ていた。
攻守ともに卓越した職人技術で初優勝に貢献した正二塁手・藤田一也も、来季は35歳シーズンを迎える。この2年間はケガも多く、バックアップ要員が必要な状況だ。
新人ながらも完全に正遊撃手の座をもぎ取った茂木栄五郎の存在は頼もしいが、ケガなどの不測の事態が起きたときの準備も欠かせない。
第一次戦力外通告期間で岩崎達郎、後藤光尊を構想外にしたこともあり、そのように予想したのだが、内野手は育成指名にとどまった。ここは阿部俊人、哲朗、三好匠、吉持亮汰ら、若手の既存戦力の底上げで乗り切るのだろう。
現時点では、球団のしっかりとした方針が感じられる上々のドラフト結果になった。
文=柴川友次(しばかわ・ゆうじ)
信州在住。郷里の英雄・真田幸村の赤備えがクリムゾンレッドに見える、楽天応援の野球ブロガー。各種記録や指標等で楽天の魅力や特徴、現在地を定点観測するブログを2009年から運営の傍ら、有料メルマガやネットメディアにも寄稿。