今夏、100回目を迎えた夏の甲子園。100回大会を記念して、これまでの甲子園の歴史から100のトピックスを厳選して紹介したい。第10回、ラストは甲子園の伝説になった最強チーム10選!
【91】最先端の野球で“戦後最強”一番乗り
戦後の高校野球で初めて“最強”と広く呼ばれたのは法政二。のちに巨人でV9戦士として活躍する柴田勲をエースに立て、1960年夏、1961年春の甲子園を制覇。夏春連覇を達成した。
浪商の怪童・尾崎行雄との名勝負もさることながら、注目を集めたのは洗練された野球スタイル。30代前半だった田丸仁監督は1957年に出版された『ドジャースの戦法』を読み込み、チーム作りを実践。部員に野球規則を一字一句覚えさせるなど、知識とスモールベースボールをベースに洗練されたチームを作り上げた。また、今も昔も珍しいスポーツ刈りのスタイルで、その姿、プレーは「都会的」と評された。
【92】エース離脱も史上初の春夏連覇
甲子園史に「春夏連覇」の文字をもたらしたのは、1962年の作新学院。エース・八木沢荘六(元ロッテ)を中心にしたセンバツでは、準々決勝で八幡商と延長18回引き分け再試合、準決勝で松山商と延長16回の死闘を制して優勝。しかし、夏の甲子園では大会直前に八木沢荘六が赤痢の疑いで離脱してしまう。エース抜きでの戦いを余儀なくされた作新学院だが、アンダースローの加藤斌(元中日)を主戦に堅い守りで勝ち抜き、春夏連覇。高いチーム力を示した。
このチームからは八木沢、加藤のほかに中野孝征、高山忠克(ともに元ヤクルトアトムズほか)の4人がプロ入りしている。
【93】最強・やまびこ打線
1982年夏、1983年春の甲子園を制し、「やまびこ打線」の名で一世を風靡した池田も史上最強といわれるチームのひとつ。1982年夏は畠山準(元南海ほか)、1983年春は水野雄仁(元巨人)が4番でエースを務め、パワフルな野球を展開した。
やまびこ打線が今も語り継がれる理由は、その圧勝ぶりにある。1982年夏の準々決勝では、甲子園のアイドル・荒木大輔(早稲田実)を14対2で粉砕。決勝でも伝統校・広島商に連打を浴びせ、12対2で圧勝した。好カードを一瞬にしてワンサイドゲームに変えたセンセーショナルな勝ち方が、ファンの記憶に残る理由だろう。
【94】KKコンビだけじゃない! 1985年PL学園
桑田真澄(元巨人ほか)、清原和博(元西武ほか)のKKコンビを擁した1985年のPL学園も間違いなく「最強」を冠するチーム。特に1985年夏の初戦では東海大山形に32安打を浴びせ、29対7と歴史的な圧勝を決めた。KKコンビの他にも内匠政博(元近鉄)、松山秀明(元オリックス)、今久留主成幸(元横浜ほか)が同期。明治大を経てプロ入りする今久留主はなんと控えだった。
【95】豪華メンバーで伝説になった1987年PL学園
1987年に春夏連覇を達成したPL学園も恐ろしく豪華なメンバーが揃っている。投手陣は野村弘樹(元横浜)、橋本清(元巨人)、岩崎充宏の三枚看板。野手には片岡篤史(元日本ハムほか)、立浪和義(元中日)、2年生に宮本慎也(元ヤクルト)がいた。後にも先にもこんなに豪華な布陣はない。ちなみに当時の3年生に言わせれば、宮本は「守備が上手い奴」程度の認識だったという。
【96】公式戦無敗の四冠
史上最強チームの第一候補に挙がるのは1998年の横浜。松坂大輔(中日)を中心に、明治神宮大会、春夏の甲子園、国体の全国大会をオール制覇。年間で公式戦41勝0敗という大記録を打ち立てた。
【97】史上最強打線
2000年代は打のチームが多数出現したが、すさまじい威力を誇ったのは2000年夏の智辯和歌山。チーム11本塁打、1大会100安打は未だに破られていない大記録だ。特に当時2年生だった3番・武内晋一(ヤクルト)は天才的な打撃を見せ、今も語り継がれる甲子園の伝説になっている。
【98】投打ともに冴え渡った琉球の星たち
2010年に春夏連覇した興南も最強チームのひとつ。琉球トルネード・島袋洋奨(ソフトバンク)の投球も素晴らしかったが、打線のつながりも凄まじかった。チーム打率.399と打撃のレベルも高く、特に3番・我如古盛次は春夏で25安打の大活躍。夏の決勝では13対1で東海大相模を下し、その強さをスコアで示した。
【99】黄金バッテリーで甲子園完全制圧
2012年の大阪桐蔭は強すぎた。藤浪晋太郎(阪神)と森友哉(西武)の黄金バッテリーは高校野球界では敵なし。特に夏の大会では、5試合で5失点。春夏10試合で2ケタ得点の試合はないものの、ソツのない試合運びで春夏連覇。派手さはないが、史上最強に推す声は多い。
【100】伝説になるか!? 2018年大阪桐蔭
本稿執筆時点では、1回戦を突破したばかりだが、今年の大阪桐蔭も間違いなく語り継がれるチームだろう。投手陣は柿木蓮、横川凱に二刀流・根尾昂の三枚看板。野手陣も藤原恭大、中川卓也を筆頭にドラフト候補がズラリと並ぶ。7番を打つ二塁・山田健太、8番の捕手・小泉航平も侍ジャパン高校日本代表候補。現時点でも果てしない最強感が漂う。5年後、10年後の評価は!?
文=落合初春(おちあい・もとはる)