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阪神が打撃性優先で敷く「複数ポジション制」の是非を問う! WBC準決勝から学ぶべきこと


 結果的に2つの守りのミスが致命傷となってしまった……。

 2017WBC準決勝、日本対米国は緊迫した投手戦が繰り広げられ、1点を争う好ゲームとなった。

 二塁手・菊池涼介(広島)は2次ラウンドまで神がかった超美技でチームを救ってきた。しかし、この準決勝の4回、雨に濡れた天然芝でスリップし、イレギュラーバウンドとなったクリスチャン・イエリチ(マーリンズ)の打球を菊池が取り損ねる。菊池の守備にエラーのランプが灯った。

 8回にはここまで日本代表のリーダー的存在としてチームを鼓舞し続けた三塁手・松田宣浩(ソフトバンク)もバウンドを合わせ損ねて捕球ミス。決勝点を与えてしまう。

 1点を争うゲームでは、このような守りのミスが勝敗を左右する。

今年も失策を連発し、不安要素が拭えない阪神


 開幕に向けて不安を拭えない阪神。不安の理由は、オープン戦から守りのミスを連発しているからだ。

 昨季の阪神は12球団ワーストの97策を記録。今季のオープン戦でも、すでに16失策とロッテと並んで12球団ワーストの失策を犯している(3月22日現在)。

 なかでも目立つのが、遊撃で過去4度のゴールデン・グラブ賞を受賞している鳥谷敬だ。オープン戦では慣れない二塁、三塁を守っているとはいえ5失策。特にスローイングが安定しない。

 鳥谷はキャンプ中、北條史也と遊撃のポジション争いを繰り広げたが、「同じレベルなら若手優先」というチーム方針のもと、三塁にコンバートされた。

 守りの不調は打撃にも影響を及ぼしている。オープン戦13試合で打率.200と精彩を欠き、本来の調子には程遠い。

複数ポジション制のほころび


 昨季から複数ポジション制を敷いている阪神。コンバートされた選手は鳥谷だけではない。

 出場機会を増やすという名目のもと、中谷将大が外野から一塁に。そして、最近では三塁にコンバートされた。

 守備負担を減らし打撃に集中することで、クリーンアップでの活躍が期待される原口文仁は捕手から一塁にコンバート。板山祐太郎にいたっては、キャンプ中、外野、二塁、一塁とたらい回し状態。持ち前の打撃にも影響が出たのか、現在はファーム落ちとなっている。

 複数ポジション制には、打撃優先でオーダーが組めるメリットがある。しかし、今の阪神には複数ポジションをこなすだけの守備力がないため、自然とほころびも出る。

 かつては堅い守りでチームに貢献した鳥谷でさえ、遊撃からポジションが変わるとリズムを乱しているのが現状だ。

 また、今季の阪神はキャンプを迎えるまで一塁不在だった。この穴を埋めるべく、まず白羽の矢がたったのが福留孝介。しかし、福留は金本監督のコンバート要請に、首を縦に振ることはなかった。

 中日時代、遊撃でミスを重ね苦労した末、外野へコンバートされた経験を持つからだ。

 福留や、大和のように内野から外野へのコンバートは成功例も多い。しかし、阪神が盛んに試している外野から内野へのコンバートは難しいのだ。


野球は守りから


 かつての中日で、鉄壁の二遊間を誇った井端弘和と荒木雅博も落合博満監督の発案で、荒木を遊撃、井端を二塁とポジションを入れ替えたことがあった。

 井端の守備負担を軽減し、少しでも長く現役を続けさせる苦肉の策だったに違いない。しかし、このコンバートは実を結ばなかった。名手「アライバ」の二遊間コンビでさえ、コンバートはしっくりとこなかったのだ。

 阪神が打撃最優先で取り組む複数ポジション制。しかし、このまま失策数が増え続けるようであれば、早い段階でポジション固定していくことも必要だろう。

 1点を競り合ったゲームこそ、守備の乱れが致命傷になる。

 野球は守りから! そのことを日本代表がWBC準決勝のゲームであらためて教えてくれた。


文=まろ麻呂
企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。

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