セ・パ12球団で唯一、育成枠を使っていない日本ハムは、戦力の強化を「ドラフト戦略」と「育成プログラム」の2本柱で行っている。競合を恐れずに、その時点で最も能力の高い選手をドラフトで獲得して、常に試合で使いながら選手を育成する、という明確なポリシーが現場とフロントで共有されているのだ。
その育成プログラムの成果を、特に投手に焦点を当てて振り返ろう。大谷翔平や、昨季新人王の有原航平、1年目に7勝の浦野博司といった、1年目から“即”活躍した選手も多いが、入団から3年以内に素質が開花して、現在チームの要になっている投手はご覧のとおり。
■日本ハムの主な“3年以内”ブレイク投手
・白村明弘(2013年・6位入団)
14年:10試合、0ホールド、防御率3.27
15年:50試合、13ホールド、防御率2.03
・鍵谷陽平(2012年・3位入団)
13年:38試合、5ホールド、防御率3.33
14年:21試合、2ホールド、防御率2.20
15年:40試合、15ホールド、防御率4.67
・上沢直之(2011年・6位入団)
12年:1軍登板なし
13年:1軍登板なし
14年:23試合、8勝8敗、防御率3.19
15年:13試合、5勝6敗、防御率4.18
その他、増井浩俊(2009年・5位入団)は2年目に56試合、34ホールド、防御率1.84、谷元圭介(2008年・7位入団)は3年目に47試合、5ホールド、防御率2.47の成績でブレイクを果たした。
まさに「育成のハム」の面目躍如! そして今回注目したいのは、2013年入団で現在3年目、今年メキメキと頭角をあらわしている高梨裕稔だ。
高梨は1991年生まれの24歳。千葉県出身で土気高から山梨学院大を経て、日本ハムにドラフト4位で入団。山梨学院大時代の3年秋に関甲新リーグのベストナインと最多勝を獲得した。なお山梨学院大からのドラフト指名第一号選手だ。ドラフト当時、球団スカウトは高梨に対して「質の高いストレート147キロと、緩急が使える抜けるカーブ110キロ。それに決め球となるフォーク。この三つの骨組みがしっかりある。あとは肉付けだけ」と、評価している。
昨季は2軍で11勝して、リーグ最多の122奪三振を記録。5月3日のロッテ戦で1軍初登板を果たした。そしてこの春季キャンプでは1軍メンバーに招集。2月6日に行われた紅白戦では、先発して2回完全4奪三振、最速148キロといきなり存在感を示すと、2月13日の韓国NCとの練習試合でも先発して3回1安打1失点と安定の内容を続けた。
3月2日の札幌ドーム初登板では結果を出せなかったものの、これも勉強のうち。齋藤佑樹、中村勝、浦野博司らと先発ローテを争う「高梨裕稔」。この名前を是非とも覚えておいていただきたい!
文=サトウタカシ (さとう・たかし)