コロナショックにより開幕が2カ月近く遅れるプロ野球。スケジュール面での波乱が起きているわけだが、ペナントレースにおいても、台風の目になる可能性が高い球団がある。セ・パ両リーグで、Bクラスから爆上げ間違いなしのチームはココだ!
セ・リーグは、何をおいてもヤクルトを挙げておきたい。今季から高津臣吾監督が新たに就任しているが、2000年以降、監督交代前後のヤクルトの順位はこうなっている。
■ヤクルト・監督交代前後の順位(2000年以降)
2005年 4位(監督:若松勉)
2006年 3位(監督:古田敦也)
2007年 6位(監督:古田敦也)
2008年 5位(監督:高田繁)
2010年 4位(監督:高田繁)
2011年 2位(監督:小川淳司)
(※高田監督は2010年シーズン途中で辞任)
2014年 6位(監督:小川淳司)
2015年 1位(監督:真中満)
2017年 6位(監督:真中満)
2018年 2位(監督:小川淳司)
2019年 6位(監督:小川淳司)
2020年 ?位(監督:高津臣吾)
今回を除いて監督交代のタイミングは5回あり、そのうちの4回がAクラス入りを果たしており、残る1回も、6位から5位へと順位は上げている。このデータを踏まえれば「最低でも最下位脱出、かなりの確率でAクラス入り」という結論を導くのは、決して乱暴でも無理筋でもない。
そもそも打線はかなりのレベル。山田哲人、青木宣親、村上宗隆、雄平は計算が立ち、昨季はケガもあって振るわなかった坂口智哉、新外国人のエスコバーも、実績は十分。中村悠平も昨季は打率.269と、捕手としては合格ラインの数字を残した。
問題はディフェンス面だ。昨季のチーム防御率は4.78でリーグ最下位。5位はDeNAの3.94だから、1点近くの差がある。これに関しては、投手陣がいかに頑張れるかだが、ドラ1ルーキーの奥川恭伸(星稜高)の加入が、刺激になりはしないか。フリーバッテングでの登板ではすでに150キロ超のストレートを披露。開幕早々に2軍での公式戦起用が予定されており、結果次第では7月中の1軍デビューもありそうだ。
開幕が遅れたことは、球界全体としてはバッドニュースだが、ルーキーにとってはプロの水になじむ期間が長くなり、プラスだったとも言える。奥川がハツラツとしたピッチングを1軍でも見せれば、チームの雰囲気も間違いなくよくなるはず。
もう一つはバレンティンの移籍だ。確かに、昨季も打率.280、33本塁打、93打点と、攻撃面の貢献度は非常に高かった。しかし、失策数はセ・リーグの外野手部門で3年連続ワースト。余計な進塁を許したり数字に表れない部分も小さくなかった。今季、左翼には、塩見泰隆や山崎晃太郎、青木宣親が入ることになりそうだが、外野全体の守備力は間違いなくアップ。失点減少には寄与するだろう。
2019年は、序盤は首位争いに加わりながら、5月半ばから16連敗。その後の交流戦も6勝12敗と大きく負け越し、浮上することなくシーズン終えた。今年は交流戦が中止。昨年のような大型連敗をすることなく食らいついていければ、上位進出のチャンスはきっと巡ってくる。
パ・リーグは、日本ハムを台風の目として強調しておきたい。昨年は5位だったが、今季は巻き返してくる可能性が高い。というのもヒルマン監督(2003年〜2007年)、梨田昌孝監督(2008年〜2011年)、栗山英樹監督(2013年〜)の直近3監督・17年間で、昨年を除いてBクラスは5回あるが、いずれも次の年にAクラスに返り咲いているのだ。同期間で、連続Bクラスがないのは、他にソフトバンクだけ。長期にわたる低迷を招かぬよう、チームマネジメントがしっかりしているのが日本ハムだ。
昨季の低迷の要因の一つとして挙げられるのは、打線のパンチ力不足。チーム打率.251はリーグ2位だったにもかかわらず、総得点はリーグ5位。これは、総本塁打数が93本でリーグ最下位だった影響が大きい。
解決策として、巨人からビヤヌエバを獲得。昨季は73試合で8本塁打と出番に恵まれない面もあったビヤヌエバも、2018年はメジャー110試合の出場で20発を放っている。虫垂炎の手術で出遅れたのは痛いが、シーズン真っ只中でなかったのは不幸中の幸いとも言える。
さらに、清宮幸太郎も忘れてはいけない。デビューしてからの2年は故障もあって7本塁打ずつと振るわなかったが、そろそろ飛躍があっていい。和製大砲としては、近年、岡本和真(巨人)が4年目、村上宗隆(ヤクルト)2年目で大ブレイク。ポテンシャルなら負けていない清宮にも同様のことがあって不思議はない。
さらに、来日1年目の昨年は故障にも見舞われ88試合で打率.255、3本塁打、35打点と、実力を出しきれなかった王柏融も、台湾時代に打率4割を2度叩き出しており、体調万全でフル出場できればこんなもんじゃないはず。
この3選手に、中田翔、西川遥輝、近藤健介、大田泰示ら実力者がうまく噛み合うようなら、首位争いを演じた昨年前半のような試合運びがシーズンを通してできるのではないか。
投手陣は、6月までに5勝を挙げながら打球直撃で左膝を骨折し戦線離脱していた上沢直之が復帰、昨季最多勝の有原航平とともに二本柱としてフル回転。宮西尚生、秋吉亮を中心としたブルペンもスタッフは揃っている。
西武、ソフトバンクの2強が幅をきかせるパ・リーグだが、今季、そこに割って入る可能性があるのは日本ハムだ。
文=藤山剣(ふじやま・けん)