平成最後の大会を平成最初の優勝校・東邦(愛知)が締める劇的な幕切れが話題を呼んだ、第91回選抜高等学校野球大会(以下、センバツ)。
熱戦のなか、今センバツで主役を張った東邦の選手を筆頭に、今秋のドラフト候補生たちはしっかりとアピールできたのだろうか。大会を振り返りながら、あらためてチェックしたい。
まずは大会を通して“二刀流”の大活躍を披露した石川昂弥(東邦)を取り上げる。
もとより「高校生ナンバーワン野手」の呼び声が高く、習志野(千葉)との決勝では2本の2点本塁打を放つなど、打撃面でも非凡な才能を示した。
また今センバツでは、背番号「1」を背に1回戦から決勝まで5の試合すべてで先発。さらに大一番で完封勝利を収めるなど、高校生レベルとしては投手としても次元の違いを見せつけた。
しかし、プロには野手一本で臨むことが報道されており、「投手・石川」を見られるのは今年度限りとなりそう。愛知は強豪校がひしめくだけにセンバツ優勝校といえども夏の愛知大会を勝ち抜くのは簡単ではないが、夏の甲子園に凱旋した際には二刀流の活躍を目に焼きつけたい。
2回戦で星稜(石川)を破り、波に乗って決勝まで駆け上がった習志野。件の試合でサイン盗みをめぐる騒動が世間を騒がせたが、選手たちは動じずに戦い抜いた。
準優勝の原動力となったのは、やはりエースであり守護神の飯塚脩人。今センバツでは先発のマウンドに立つことはなかったが、5試合中3試合で白星をつかみ、決勝で自己最速の148キロをマークするなど尻上がりに調子を上げた。
エースというと最初から最後まで1人で投げ抜くイメージを抱きがちだが、途中から登板して、しっかりと試合を締めることも大事。有力な投手を複数用意できるチームには限りがあるが、飯塚の起用法が一石を投じたことは間違いない。
昨秋の明治神宮大会の準優勝チームとしてセンバツに乗り込んだ星稜。エース・奥川恭伸、高校球界屈指の捕手・山瀬慎之助をはじめ複数のドラフト候補が名を連ね、大会前の評価では優勝候補筆頭と目されていた。その期待の高さには「優勝間違いない」という声も挙がるほどだった。
結果は前述の通り、2回戦で習志野に敗退。プレッシャーから前評判通りに事を進めるのは難しかったのかもしれない。しかし、そんな状況下でも奥川は2試合で完投し、27個もの奪三振を積み重ねた。特に初戦では履正社(大阪)の強力打線から毎回の17奪三振を奪い、3安打完封に封じた投球は圧巻だった。あらためてその怪物ぶりを知らしめた。
この好投でプロからの評価はさらに高まり、田中将大(ヤンキース)、前田健太(ドジャース)、菅野智之(巨人)ら大投手が引き合いに出されている。
甲子園制覇のチャンスは残すところ1回だけになったが、夏にすべてを“持っていきそう”な予感が漂う。
史上最多となるセンバツV5を達成した東邦。近年は甲子園にこそ出場するものの、なかなか上位進出を果たせていなかった。それだけに平成最初のセンバツ優勝校に対して、「平成最後の大会」という看板がチームの背中を押したようにも思える優勝劇だった。
来る令和に向けてなかなか乙なシナリオであるが、東邦が再び「新元号最初の甲子園覇者」の称号を戴冠することを阻止すべく、ライバル校は気合を入れ直してくるに違いない。
東邦対全国の強豪校。また1つ、夏の楽しみが増えた。
文=森田真悟(もりた・しんご)