7月21日、大阪桐蔭がまさかの3回戦敗退を喫した。関大北陽を相手に1対2で逆転負け。大阪桐蔭の150キロ左腕エース・高山優希は「自分が甘かった」と悔しさをにじませた。
1年秋からベンチ入りした高山は、昨春のセンバツで甲子園デビュー。秋の神宮大会準々決勝(高松商戦)では150キロを計測。しかし、今春のセンバツ2回戦で敗退した後は、腰痛で春季大会のメンバーから外れるなど、不安を抱えた状態だった。それでも関大北陽戦では最速146キロのストレートに加え、カーブ、スプリットを操って11奪三振。ポテンシャルの高さを示したのはさすがだった。
試合を視察した7球団のスカウトも高評価。高山は試合後、「高校での経験を生かして、プロの世界でもしっかりやっていきたい」と、将来を見据えたコメントを残した。ストレートだけでなく、変化球もしっかり扱えるだけに一皮剥けた今後の投球に注目したい。
昨春のセンバツ優勝校で5季連続の甲子園を目指していた敦賀気比がまさかの初戦敗退。自身初の15回、208球を投げ切ったエース・山崎颯一郎の力投は報われなかった。
山崎は中学3年時にボーイズ日本代表に選ばれ、世界少年野球大会で優勝。鳴り物入りで敦賀気比に入学し、1年春からベンチ入りしていたが、当初は昨春のセンバツ優勝投手・平沼翔太(日本ハム)の陰に隠れていた。
新チームになってからは、188センチの長身から投げおろす角度のあるストレートに、スライダー、カーブなどを巧みに織り交ぜた「大人びた投球」で同世代を代表する投手に。しかし、今年5月に原因不明のじんましんを発症。6月の北信越大会では星稜(石川)を相手に7失点して敗れるなど、調子を落としていたなかでの15回の力投だった。
驚くような球速ではないが、視察に訪れたスカウトは「指にかかったストレートは打てない。高校生ではトップクラス」と将来性を評価。次の舞台でのさらなる成長が期待される。
今夏の地方大会で最も全国的に知名度を挙げたのが江陵のエース・古谷優人だ。しかし、古谷も甲子園には届かなかった。
北北海道大会2回戦の旭川西戦では、自己最速を4キロ上回る154キロを2度計測。春夏を通じて同校初の甲子園まであと一歩に迫ったが、準決勝で滝川西に1対3で惜敗。毎回12奪三振の力投は実らず、古谷も涙を流した。
古谷の名は、親戚の古谷拓哉が所属するロッテがドラフト1位候補に挙げている。また、阪神のスカウトも「3位では残っていないだろう」と話すなど、多くの球団が高く評価上位指名の可能性が十分にある。
「北の怪物」が全国の舞台に登場する日を楽しみに待ちたい。
昨夏の甲子園で完封勝利を挙げた草海光貴(上田西)、福岡県の2大エース・梅野雄吾(九産大九産)と濱地真澄(福大大濠)ら、甲子園での活躍が期待された逸材も地方大会で姿を消した。
草海は昨夏の甲子園1回戦(宮崎日大戦)で99球の無四球完封勝利。最終学年でのさらなる飛躍が見込まれた。しかし上田西は長野大会・準々決勝の東京都市大塩尻戦で2対10(7回コールド)とよもやの大敗。草海自身も6回5失点と本来の投球を見せることができなかった。
また、福岡大会の主役と目された梅野雄吾と濱地真澄の両右腕は大会序盤で敗退。優勝候補が去り、福岡は波乱の大会となった。
最速154キロのストレートを誇る梅野は、初戦の浮羽究真館戦で8回1失点、9奪三振と圧巻の投球。駆けつけた12球団20人のスカウトが見つめるなか上々の滑り出しを見せた。
迎えた3回戦の福島戦、梅野は3番・右翼で先発出場。1点差に詰め寄るスリーランを放つも、他の投手が失点を重ねてしまう。結局、梅野は8回2アウトから登板したが、時すでに遅く敗戦……。不完全燃焼のまま最後の夏を終えた。
一方の濱地は初戦の福岡第一戦で、12球団30人のスカウトが見つめるなか、自己最速にあと1キロと迫る145キロを計測。自らホームランも放ったが、8回にエラーを含む4失点で逆転負けを喫した。
「自分がみんなの夢を消してしまって申し訳ない気持ちでいっぱいです」。濱地はそういって涙を流した。それでもスカウトの評価は変わらない。むしろ評価を上げたスカウトもいたくらいだ。
両右腕とも不完全燃焼の夏となってしまったが、このモヤモヤを次のステージできっと晴らしてくれるだろう。
この他にも都城の最速151キロ右腕・山本由伸、れいめいの最速149キロ右腕・太田龍、そして来年のドラフトで争奪戦必至の早実・清宮幸太郎も地方大会で散った。
どの選手もまだ将来のある期待の選手ばかり。今夏の悔しさを糧に1人でも多くの選手が、その才能をプロ野球で開花させることを期待したい。
文=山岸健人(やまぎし・けんと)