まず紹介したいのは、世代ナンバーワン投手の呼び声も高い浦和学院の佐野涼弥。最速141キロのストレートとタテに落ちるスライダーを武器に、昨秋の埼玉県大会準決勝の浦和実戦で14三振、今春の埼玉県大会3回戦の本庄東戦で16三振を奪う快投を見せ、「ドクターK」の異名を与えられた左腕だ。
今春の関東大会では先発こそなかったものの、横浜、前橋育英、日大三、東海大相模といった関東屈指の強豪を相手に毎試合奪三振を記録。チームを見事、優勝に導いた。
こうして自信を深めて臨んだ夏の埼玉大会。浦和学院は順調に勝ち上がり、決勝で花咲徳栄と対戦。しかし、3番手で登板した佐野は自慢のスライダーを花咲徳栄打線に見切られて動揺。押し出しを連発し、自滅してしまった。
それでも「やられたままでは終われない」と、打者として意地の2点本塁打を放つ。この負けん気で、100回大会の主役の座を狙う。
投手では中央学院の大谷拓海にも注目したい。昨秋は1年ながら千葉県大会の決勝でプロ注目の東海大市原望洋の金久保優斗と互角に投げ合い、その後のセンバツに出場することになる東海大市原望洋打線を6回途中まで2点に抑えた好投手だ。
圧巻だったのは秋季関東大会1回戦の市川戦で、9回2死までノーヒットというあわやの1安打完封をやってのけた。2回戦でその夏の甲子園王者になる作新学院に敗れるが、その名を知らしめた。
今夏の千葉大会は2回戦の銚子商戦で先発するも敗退。力を発揮しきれなかった。しかし、次はいよいよ自分たちの世代。最高学年として挑む最後の夏に、1年時のきらめきをもう一度見せてほしい。
続いては打者。前回の記事で横浜の万波中正に触れたが、神奈川にはほかにも逸材がいる。その1人が東海大相模の森下翔太だ。
森下は、中学時代(戸塚シニア)のチームメイトが横浜進学を選んだことで、「対戦して勝って甲子園に行きたい」と思ったことからライバルの東海大相模へと進学。1年夏に早くも4番に座るが、華々しい活躍……とはならず。
それでも体力、技術、そしてメンタルを鍛えたことで、今春の関東大会では4試合で毎試合安打を放ち、計8安打をマークするまでに成長。その時点で高校通算22本塁打を放っている。
名前のように「翔ぶ」がごとく育っているスラッガー。来年の夏は記念大会ということで激戦区・神奈川に2枠が与えられ、甲子園に出場できる可能性は大いに広がった。聖地の土を踏むために己のバットで結果を出す!
また関西の名門にもミレニアム世代を代表する打者がスタンバイしている。入部約1カ月で「1番・遊撃」の座を手にした報徳学園の小園海斗だ。
中学時代(枚方ボーイズ)に大阪桐蔭の2年生スラッガー・藤原恭大とともに全国を舞台に戦い、U-15侍ジャパン代表というバックボーンがあった小園。もともと期待値が高かったが、並み居る上級生を相手にレギュラーを張り、春季兵庫県大会では出場した5試合ですべて安打を放ち、あらためてただ者ではないことを知らしめた。
今春にはセンバツに出場。4試合で18打数9安打、1本塁打、5打点の活躍を見せ、チームのベスト4進出の原動力となった。今夏は兵庫大会準決勝で敗れ、夏の甲子園出場は叶わず。相手が優勝した神戸国際大付だったとはいえ、本人は納得できるはずがない。
この悔しさを晴らせるのは、来春、そして来夏の甲子園に出場することだけ。誰もが羨む才能の持ち主は、必ずや聖地のスタンドを沸かせてくれるだろう。
夏の甲子園に出場できていない選手でも、これほどまでに逸材が揃っているミレニアム世代。
日本の野球界の未来を託した、と言いたくなるほどだが、まずは来年の夏、第100回大会という最高に注目が集まる舞台ですべての力を発揮してもらいたい。
あと1年、彼らはどんな成長曲線を見せてくれるのか。ケガなく過ごしつつ、最高のパフォーマンスを発揮できる練習をしてほしい……と、贅沢なことを考えてしまう自分がいる。
文=森田真悟(もりた・しんご)