「極私的プロ野球ドラフト会議2016」は久保弘毅氏(ライター・司会・元tvkアナウンサー)、菊地選手(ライター・『野球部あるある』著者)、蔵建て男氏(スカウト的観戦者・ドラフトサイト「迷スカウト」管理人)の3名によるトークで幕を開けた。
トークは約30分。総合力で寺島成輝(履正社高)に3球団くらい指名が集まるのではないか、松本桃太郎(仙台大)はホームランを打っているがスラッガーというより本質的にはアベレージ系だろう、といった注目選手に関する話題で盛り上がり、極私的ドラフト会議へと移っていった。
「極私的ドラフト」は12球団の担当を2、3名で受け持ち、実際のドラフトのように指名していく仮想ドラフトだ。本誌『野球太郎』はもちろん、様々なドラフト情報誌、さらにはお手製の指名リストが、12球団ごとに分けられた机の上に所狭しと置かれている。
初めて顔を合わせる参加者も多いこのイベント。当日に話し合いで指名を決めるという状況のなか、各球団の担当者が第1巡選択希望選手を用紙に書き提出する。
第1巡選択希望選手が12球団出そろうと、司会を務める久保氏の声が響く。
「第1巡選択希望選手、オリックス」
一瞬の間が空く。
「田中正義、投手、創価大学」
会場には「やっぱり!」「いきなり田中がきた!」と言った声が挙がる。続く中日も田中を指名。ここで「中日も田中!? 柳は!?」と言った声も当然のように聞こえてくる。中日担当の参加者は、柳裕也(明治大)をハズレ1位で獲得する予定なのだろうか。
しかし、続く楽天の指名はなんと柳だった。中日陣営は苦笑いだ。
その後も指名は続く。
ヤクルトが山岡泰輔(東京ガス)を指名。ここ数日で報道されたヤクルトの1位は山岡説に忠実に沿っているようだ。
西武、阪神は田中正義を指名。
そして、ロッテが藤平尚真(横浜高)を指名。初めて高校生の名前が読み上げられた。ロッテは横浜高の先輩である涌井秀章がおり、生まれてから中学までを過ごしてきた千葉県ということで、藤平にとって馴染みやすい球団かもしれない。
続くDeNA、ソフトバンク、巨人、日本ハム、広島の5球団はなんとすべて田中を指名。田中の名前が読み上げられる度に、指会場からは笑いしか起こらなくなっていた。
1巡目指名をまとめてみよう。
【9球団競合】田中正義(創価大)
オリックス、中日、西武、阪神、DeNA、ソフトバンク、巨人、日本ハム、広島
【交渉権確定】
ロッテ:藤平尚真(横浜高)
ヤクルト:山岡泰輔(東京ガス)
楽天:柳裕也(明治大)
田中は9球団競合となり、野茂英雄(新日鐡堺→近鉄・1989年ドラフトで8球団競合)、小池秀郎(松下電器→近鉄・1990年ドラフトで8球団競合し、ロッテが交渉権を得るも入団拒否)を超える逸材となった。「極私的ドラフト会議」での話だが……。
ここからは本番さながらの抽選だ。各球団の代表者が前に並び、抽選箱の中にある「交渉権確定」の文字が書かれた紙を手繰り寄せようと手をねじ込む。
全員が引き終わった。
一斉に開票する。
手を挙げたのは広島の代表者だった。
会場には「勘違いではないか?」などといった声も飛ぶ。真中満監督(ヤクルト)の勘違いガッツポーズの笑顔が、皆の脳裏をよぎったのは間違いない。
当たりくじを引いた広島の代表者は「田中投手は来年の開幕投手も狙える存在だ」と、現在のチーム状況に照らし合わせたコメントを残した。
◎ハズレ1位も4球団競合!
田中正義を外した8球団はハズレ1位の指名を行う。球団ごとに作戦会議が行われる。
各テーブルの声に耳をすますと「寺島」、「今井(達也、作新学院高)」、「高橋(昂也、花咲徳栄)、「佐々木(千隼、桜美林大)」といった名前がチラホラと聞こえてくる。
田中正義を外すのは想定内。ここからが本当の勝負だ。
8球団の入札が出そろう。
ここでもある選手に偏った。寺島成輝(履正社高)だ。寺島にオリックス、DeNA、ソフトバンク、日本ハムが競合した。
中日は吉川尚輝(中京学院大)、西武は高橋昂也(花咲徳栄高)、阪神は佐々木千隼(桜美林大)、巨人は今井達也(作新学院高)を単独で指名。交渉権を獲得した。
ハズレ1位をまとめよう。
【4球団競合】寺島成輝(履正社高)
オリックス、DeNA、ソフトバンク、日本ハム
【交渉権獲得】
巨人:今井達也(作新学院高)
阪神:佐々木千隼(桜美林大)
西武:高橋昂也(花咲徳栄高)
中日:吉川尚輝(中京学院大)
2度目の抽選で寺島成輝の交渉権はオリックスが獲得した。
ハズレのハズレ1位は、各球団とも競合を避ける結果となった。ソフトバンクが高良一輝(九州産業大)、日本ハムは古谷優人(江陵高)と地元出身の選手を狙う。そしてDeNAは堀瑞輝(広島新庄高)を指名した。
12球団の1位指名選手をあらためてまとめてみよう。
【1位指名選手】
日本ハム:古谷優人(江陵高)
ソフトバンク:高良一輝(九州産業大)
ロッテ:藤平尚真(横浜高)
西武:高橋昂也(花咲徳栄高)
楽天:柳裕也(明治大)
オリックス:寺島成輝(履正社高)
広島:田中正義(創価大)
読売:今井達也(作新学院高)
横浜:堀瑞輝(広島新庄高)
阪神:佐々木千隼(桜美林大)
ヤクルト:山岡泰輔(東京ガス)
中日:吉川尚輝(中京学院大)
妥当なところに落ち着いたというのが筆者の印象だ。実際のドラフトも田中を外した後のハズレ1位で誰を指名するのかがポイントとなりそうだ。
◎指名漏れの選手たち
その後も各球団5巡目まで指名を続け、約3時間で「野球太郎極私的プロ野球ドラフト会議2016」閉会となったが、筆者が気になった指名漏れの選手も紹介しよう。
【投手】
北出浩喜(パナソニック)
酒居知史(大阪ガス)
?地真澄(福大大濠高)
【野手】
森山恵佑(専修大)
石井一成(早稲田大)
田城飛翔(八戸学院光星高)
「12球団×5位指名=60名」のなかで、上記の6選手が指名されなかったのが意外だった。
野球太郎による「極私的ドラフト会議」と本家・ドラフト会議のは近い結果なのか、それともまったく違う展開なのか? 10月20日の17時から開催される本家・ドラフト会議を楽しみに待ちたい。
野球好きにとってドラフトは一大イベント。筆者はしっかりとテレビの前で待機するつもりだ。
文=勝田 聡(かつた さとし)