まず、通算勝利数ベスト10のラインナップを見てみる。やはり10人中8人が180センチ以上と長身だ。
■通算勝利数ベスト10
1位:金田正一(元国鉄ほか)/400勝/184センチ
2位:米田哲也(元阪急ほか)/ 350勝/180センチ
3位:小山正明(元阪神ほか)/ 320勝/183センチ
4位:鈴木啓示(元近鉄)/ 317勝/181センチ
5位:別所毅彦(元巨人ほか)/310勝/181センチ
6位:スタルヒン(元東京巨人軍ほか)/303勝/191センチ
7位:山田久志(元阪急)/284勝/176センチ
8位:稲尾和久(元西鉄)/276勝/180センチ
9位:梶本隆夫(元阪急)/254勝/186センチ
10位:東尾修(元西武ほか)/251勝/177センチ
厚生労働省の資料によると、日本人の平均身長は、1950年頃が約160センチで、170センチに達したのは1990年代に入ってから。つまり、10傑にランクインしている多くのレジェンドたちは、当時の一般の人よりかなり大柄だったことがわかる。
最近でも、大谷翔平(日本ハム)や藤浪晋太郎(阪神)といった大柄な投手が、160キロ級のストレートを投げ込んでいる。ただ、小柄でも力強いストレートを持ち味とする好投手がいないわけではない。
現役選手で最も印象が強いのは身長171センチの“ライアン小川”こと小川泰弘(ヤクルト)だろう。左足を上体につくほど持ち上げるダイナミックなフォームから繰り出すストレートが持ち味の小川は、まさに「小柄な豪球投手」だ。
成績は16勝を挙げて新人王を獲得したルーキーイヤー(2013年)がキャリアハイ。その後は2015年の11勝が最高と、やや物足りないものとなっている。もうひと伸びを期待したい。
美馬学(楽天)も身長169センチと小柄ながら、150キロ超のストレートを武器とする豪球系の投手だ。
今季は初の開幕投手を務め、6回3失点と粘りの投球でチームの延長サヨナラ勝ちを呼び込んだ。自身も2試合目の登板で今季初勝利を挙げており、好調な楽天の立役者のひとりと言ってもいいだろう。
美馬と同じ東京ガス出身のドラ1ルーキー・山岡泰輔(オリックス)も172センチと小柄。アマチュア時代に最速152キロを計測したこともあるが、豪球というイメージではない。多彩な変化球とストレートのコンビネーションで、より速く見せるタイプだ。
オープン戦では2試合で11回1/3を投げ自責点2と好投。シーズン初登板となった4月13日のロッテ戦では7回に痛恨の3ランホームランを打たれ敗戦投手となったが、6回までは無失点に抑えた。今季のオリックスは打線が活発なので、この調子でしっかり試合を作っていければ勝ち星を挙げる日は近そうだ。
全員が豪球系というわけではないが、ほかにも石川雅規(ヤクルト)が167センチ、谷元圭介(日本ハム)が167センチ、野田昇吾(西武)が167センチ、大山暁史(オリックス)が168センチと、美馬も含めて170センチ未満の投手はいる。
冒頭で触れたように大柄の方が有利なポジションではあるが、小柄でも自身の長所に磨きをかけ、活躍している投手も存在する。未来のプロ入りを夢見る小柄な野球少年たちにとっては、彼らの存在がいいお手本になるだろう。
文=藤山剣(ふじやま・けん)