6月29日に日米通算199勝を挙げた黒田博樹が、次の登板となる中日戦で「リーチ一発200勝」達成。それが広島ファンの願いだった。偉業達成の瞬間を目にするため、中日戦が行われる金沢の地に遠征したファンも多かったに違いない。
しかし、偉業達成を目前にした黒田と、ファンの前に立ちはだかったのは中日だった。
黒田に対し中日打線は6回までに3点を奪う。7回表には黒田へ代打が送られる。ここで逆転とはならず、黒田の200勝達成はお預けとなってしまった。
麻雀をやる方ならおわかりだろう。リーチ一発のあがりは決まりそうで決まらない。「世の中そんなに甘くない」という中日からのメッセージだ。
1771日ぶりの復帰登板。神宮球場の一塁側からライトスタンドは、由規(ヤクルト)を待ちわびたファンでいっぱいに埋まっていた。投球練習で由規が姿を現した瞬間から拍手、声援の雨嵐。昨季、館山昌平が復帰したときと同様、祝福ムードが神宮球場を包んだ。
そんなアウェー感をものともせず中日は由規に向かっていく。初回から大島洋平のツーベースをきっかけに先制。その後もヒットを重ねていった。
6回裏、由規は満塁で迎えた森野将彦に全7球、ストレートで挑む。6球目にはこの日最速となる149キロをマーク。しかし力投は報われず、結果的に押し出しの四球を与えて降板となった。
森野に立ち向かう由規の気迫のこもった姿に、押し出しの瞬間には自然と拍手が沸き起こった。そのまま由規は大きな拍手のなか降板。結局、6回途中6失点の由規には負けがつくことに……。
これは「1771日ぶりの登板で簡単に勝てるほど甘くはないぞ」という中日からのメッセージだ。
DeNAファンが待ち望んでいた番長復活の日。先発投手が好調でなかなか出番の回ってこなかった三浦大輔だが、7月11日にようやく先発の機会が訪れた。
月曜日の試合にも関わらず横浜スタジアムは超満員。三浦への期待の大きさがわかろうというものだ。
しかし、またもや中日打線は先頭打者・大島がツーベースで口火を切ると、1回に一挙6点を奪い勝負を決めてしまった。
「24年連続勝利」もかかっていたこの試合。記録更新はお預けとなってしまったが、野手も含めて歴代4位となる「24年連続ヒット」を放ったのは三浦の意地だろうか。
もちろん、は「24年連続勝利が簡単にできると思うなよ」という中日からのメッセージだ。
1週間で3度ヒール役を演じた中日。現時点では、団子状態のセ・リーグ2位争いを抜け出せていない。
しかしこの結果を見ると、毎日が対戦相手の“特別な日”なら、中日は勝ち星を積み重ねて混戦を抜け出せるかもしれない。中日ファンは対戦相手の“特別な要素”をチェックだ!
「そんなに毎日“特別な要素”があると思うなよ」。最後に、そんなメッセージを中日ファンに送っておきたい。
文=勝田 聡(かつた さとし)
松坂世代のひとつ上にあたりサッカーの黄金世代となる1979年生まれ東京育ち。プロ野球、MLB、女子プロ野球、独立リーグと幅広く野球を観戦。 様々な野球を年間約50試合現地観戦し写真を撮影する。プロ野球12球団のファンクラブ全てに入会してみたり、発売されている選手名鑑を全て購入してみたりと幅広く活動中。