なんといっても、最も多くの観戦数をこなすタイプは「外野応援席の住人」であるケースが目立つ。彼らが一試合一試合を見つめる視線は、ワンプレーごとに対するものではなく、シーズン全体を俯瞰するもの。むしろベンチ目線に近いといえる。
毎試合、外野応援席の同志の安否を確認しつつ、適度な「呑みニケーション」とともにチームを愛でるのが彼らのやり方だ。ついつい話し込んでしまい、試合をあまり見なかった……、という現象もしばしば起こる。
観戦にかかるお金に糸目はつけない。内野の守備陣形にも気を配り、ランナーのスタートにも気づきたい。そして、球のキレ、プレーのスピードを感じたい。となると、微妙な距離感でポジショニングを取る必要がある。
そんなファンはベンチの上あたりからスタンドの中腹あたりに陣取ることが多い。臨場感やスピードを肌で感じつつ、采配やチームの動きにも目配りできる位置取りが大事なのだ。
しかし、このあたりにはシーズンシートを譲り受けて観戦を楽しむ「アフターファイブのサラリーマン」も多く、特に大一番の「プラチナカード」では、にわかファンのコメントが気になって試合に集中できないこともある……。
外野席にほど近い内野席。周囲にやや余裕のあるこの周辺には、人知れず観戦記録をスコアブックにつける住民がいる。
彼らスコアブックをつける目的は、自分の観戦記録のためか、はたまた野球チームスタッフとしてスコア書きの練習をしているのか、理由は様々。しかし、淡々と試合を見つめるその眼差しには、同じ野球ファンとして共感せずにはいられない。
神宮球場など、フィールド内にブルペンがある球場にはブルペン専門のスポッターもいる。ここはここで、プロの投手の球速を一番身近で体感できるスポットだ。
そしてバックネット裏や内野の最前列での楽しみは、選手や監督、コーチらの会話や掛け声を聞くことができることだろう。選手の息づかいを感じると、そのチームに勢いの有無も感じることができるのだ。
文=元井靖行(もとい・やすゆき)