「オールスターゲームの連続奪三振記録は?」と聞かれれば「江夏豊の9連続」と答えられるファンが多いだろう。しかし、それは見方を変えると正解ではない。たしかに阪神時代の江夏は、1971年のオールスターゲーム第1戦で先発し、1回から3回まで9人の打者すべてを三振に切って取っている。
ただ、実は前年の第2戦の登板を5連続奪三振で終えており、さらに翌年の第3戦でも最初のバッターから三振を奪っている。これらをつなげると、江夏の記録は「15連続奪三振」ということになるのだ。なお、通算の最多奪三振記録は金田正一(元国鉄ほか)の84奪三振。
ちなみに、打者の連続打席三振記録は、江藤智(元広島ほか)が1993年の第2戦と1995年の第1戦で喫した4打席連続三振。通算の最多三振記録は清原和博(元西武ほか)の40三振だ。
オールスターゲームで、ひとりの投手が1試合で投げられるのは3イニングまで。これもファンの常識として定着しているだろう。しかし、そのルールが破られたケースがあった。
西武球場で行われた1982年のオールスターゲーム第2戦。6回を終え5対4で全セがリードという局面で、その最少点差を守るべく全セの4番手として7回からマウンドに上がったのが斉藤明夫(元大洋)だった。斉藤はいきなり1点を失い同点とされるも、その後は両軍譲らず延長へ。
1982年当時は「試合開始から3時間を超えて新しいイニングに入らない」という延長戦ありのルール。そして、1試合あたり最長3イニングという投手の投球回数規定も、延長の場合はその対象外という決まりもあった。
控え投手がいなかったこともあり、結局、斉藤は7回から試合終了となる延長11回までの5イニングを投げきったのだ。
なお、1992年以降は「9回で打ち切り、延長戦なし」となっているため、斉藤の「1試合5イニング」は、現行のルールが改正されない限り、この先もオールスターゲーム最長記録として残ることになる。
ついでに紹介すると、オールスターゲームの試合自体の最長イニングは、1952年第1戦の延長21回。4回表に全セが2点を先制するも、6回裏に全パが蔭山和夫(元南海)の2ラン本塁打で追いつき、そのまま両チームはこう着状態。延長21回、2対2のまま日没のためゲームセットとなった。
最後に、球界の大物スラッガーたちがどんなオールスターゲーム記録を保持しているか、紹介していこう。
■王貞治
最多試合出場:58試合
最多四球:33四球
王貞治(元巨人)といえば、誰もがイメージするのが本塁打だが、オールスターゲームの通算最多本塁打記録は山本浩二(元広島)の14本塁打で、王は13本塁打(清原和博と並ぶ2位タイ)。なお、ONとして球界をリードしてきた「相方」の長嶋茂雄(元巨人)は、17年連続ファン投票選出とさすがの人気を誇ったが、意外にもこれといったオールスターゲーム記録を樹立してはいない。
■野村克也
最多出場回数:21回
最多安打:48安打
最多二塁打:15二塁打
最年長出場:45歳
公式戦出場3017試合という野村克也(元南海ほか)の記録は、2015年に谷繁元信(元中日ほか)に抜かれるまでは歴代トップで、オールスターゲームも常連。最多安打記録を持っているのはさすがだ。45歳で出場した1980年は、第3戦に代打で出て、そのままマスクをかぶった。
■イチロー
最多連続フル出場試合:17試合
最多連続試合安打:11試合連続安打
最高打率(50打数以上):打率.394
最多連続打席安打:5打席連続安打
日本での現役9年間で、オールスターゲームに7回出場しているイチロー(当時オリックス/現マーリンズ)。50打数以上の最高打率.394、5打席連続安打など、イチローらしい記録を残している。
なお、渡米後もメジャーリーグのオールスターゲームに10回出場していて、2007年には史上初のランニングホームランも放っている。
■清原和博
最多打点:34打点
最多MVP:7回
最多三振:40三振
最年少本塁打:18歳11カ月
最年少MVP:18歳11カ月
MVPを7回も獲得し「オールスターゲーム男」「お祭り男」の異名をとる清原。その反面、公式戦の歴代最多三振記録(1955三振)も持っている選手らしくオールスターゲームでも豪快なスイングで三振を重ねた。
■松井秀喜
最多連続試合本塁打:4試合連続本塁打
日本で10年間プレーした松井秀喜(元巨人ほか)は、オールスターゲームに9回出場。最多記録となる4試合連続本塁打は、1997年第2戦、1998年第1戦、第2戦、1999年第1戦と、足掛け3年に渡って達成した。
文=藤山剣(ふじやま・けん)