今の野球界の盛り上げにひと役買っているブレイク中の選手。若くして成功した彼らは、どんな高校時代を歩んできたのだろうか。
今回の週刊野球太郎では、彼らの高校時代にスポットを当てる!
68試合で18本塁打(6月18日現在)と、堂々の成績を残している村上宗隆(ヤクルト)。2年目ながら高校通算52本塁打の打棒が早くも開花したと言っていいだろう。
九州学院高時代は同期の清宮幸太郎(日本ハム)の陰に隠れる形になっていたが、1年時から「肥後のベーブ・ルース」と期待され、2年の秋以降だけで35本塁打を放つ活躍を見せていたのだ。
甲子園は1年夏しか出場できず、しかも清宮の外れ1位とはいえ、ドラフト1位を勝ち取ったポテンシャルは伊達ではなかった。
千賀滉大や甲斐拓也など育成ドラフト組から次々と好選手を輩出しているソフトバンク。次なるブレイク選手は大竹耕太郎だ。
済々黌高では1年春からベンチ入りを果たし、その秋には早くもエースとしてマウンドへ。2年夏には前年の秋季大会で破れた九州学院高にリベンジを果たして甲子園に出場。3年春もセンバツに出場して常総学院高を完封するなど、大人びた投球術で強豪校と渡りあった。卒業後は早稲田大に進み、育成ドラフトでプロ入りを果たしたが、育成でしか指名されなかったのが不思議なほどの実績を残し続けた。
華奢な体つきや、早稲田大時代に一時、フォーム改造からの不調に陥ったことで評価を下げたのかもしれないが、埋もれる前に発掘されて本当によかった。大竹の高校時代を振り返ると、そう思わずにはいられない。
菊池雄星(マリナーズ)がメジャーリーグに挑戦したことで、手薄な投手陣がさらに危うくなった西武。その穴を埋めたいのが今年で5年目の高橋光成だ。
前橋育英高の1年夏からベンチ入りを果たすと、エースとして迎えた2年夏の甲子園でチームの初出場初優勝に貢献。決勝こそ3失点を喫するものの、初戦から完封、完封、完投(1失点)、完投(1失点)とほぼ完璧な投球を披露する。初戦の岩国戦では9者連続奪三振という歴代2位に食い込む大会記録も残した。
3年の夏は群馬大会の3回戦で敗れたため聖地に行くことはできなかったが、残したインパクトは大きかった。
先述した3選手は甲子園出場歴があるが、もちろんそれだけがすべてではない。2011年のドラフトで1位指名を勝ち取り、今季、いよいよブレイクとなった高橋周平(中日)はその好例だ。
東海大甲府高で1年から4番を張り続け、練習試合ながら1イニングで2本の満塁弾を放つといった驚愕エピソードを持つ高橋。3年春の山梨県大会では決勝で高校通算57本目の本塁打を放ったが、それが山梨県の記録を更新する一発だったのは“持っている”男だったということ。
今年で25歳。若手と言うにはギリギリのラインかもしれないが、このまま突っ走ってもらいたい。
昨年は、高卒2年目ながら中継ぎで54試合に登板し、オールスターゲームにも出場した山本由伸(オリックス)。それだけに高校時代はどんな活躍を見せていたのか気になるところだが、実は甲子園とは縁がない。
進学した都城高は宮崎の強豪だが、甲子園出場は大半が昭和時代のもの。山本も3年夏は宮崎大会の3回戦で敗れるなど、今では古豪という雰囲気が漂うのは、古くからのファンからすると少し寂しいところだ。
とはいえ、山本は2年春には147キロ、同年夏には151キロを叩き出すなど台頭していた。県の新人大会の決勝でノーヒットノーランを達成し、秋季大会で完全試合(5回参考)を記録するなど結果も残してきた。
今季は好投を続けながらも打線の援護に恵まれず3勝3敗(6月18日現在)と勝ち星を積み上げられていないが、防御率は11試合に登板してリーグトップの防御率1.85。2位の千賀(防御率1.88)を上回る防御率を記録し、相手打線を封じているのもうなずける。
松井秀喜(元ヤンキースほか)然り、松坂大輔(中日)然り、大谷翔平(エンゼルス)然り、「強豪校から甲子園での活躍を経てプロ入り=早期の成功」というキャリアは王道に感じられる。
ただ、成功の確率は王道派の方が高いのだろうが、ブレイク選手が高校時代にはあまり脚光を浴びていなかったケースがあるのも興味深い。
プロでブレイクした若手が出てきたら、それまでに辿ってきた道もチェックするとよりブレイク選手への理解、興味が増すのは間違いない。
文=森田真悟(もりた・しんご)