この苦境で期待したいのは、筆者在住・信州が生んだプロ野球選手・聖澤諒のバットだ。
昨オフは獲得した国内FA権を封印。仙台で戦うことを決意したプロ10年目の今シーズンは、7月に入るまでの出場機会は主に代打、代走、守備固めに限られていた。
しかし、右翼を守るペゲーロがDHにまわるケースも増えた7月以降、主に左翼で先発出場する機会が増加。ここまで86試合で181打席に立ち、打率.249ながらも要所での活躍が光り、ヒーローインタビューには3度呼ばれている。
聖澤のアベレージだけ見ると確かに物足りない。だが、この「背番号23」は、ある局面では絶大な戦果を挙げているのをご存じだろうか? それは「150キロ超えのスピードボール撃ち」だ。
元々、全盛期から聖澤はチーム屈指の速球撃ちの達人だった。しかし、ここへきて目覚ましいのは「150キロ撃ち」の戦績なのだ。筆者の集計では昨季もスアレス(ソフトバンク)の151キロ、大谷翔平(日本ハム)の152キロなどをヒットにし、10打数4安打、1三塁打、1三振、打率.400の成績を残した。そして、今季も14打数8安打、1二塁打、2三振、打率.571とすこぶる上々。現在、チームの「150キロ超え安打」は44安打を数えるが、聖澤の8安打は、銀次の7安打を上まわり、チームトップのウィーラーの9安打に肉薄する多さになっている。
8月19日のソフトバンク戦。楽天は千賀滉大に8回4安打無失点の好投を許し、0対2で敗れたが、聖澤は千賀が繰り出す152キロ、151キロの速球を球威負けせずにセンターへ弾き返し、2安打を放った。
ほかにも、ドリス(阪神)の155キロ、黒木優太(オリックス)の150キロ、ヘルメン(オリックス)の151キロ、バンデンハーク(ソフトバンク)の152キロ、菊池雄星(西武)の153キロなど、好投手の剛速球を打ち砕いてきた。
逆転優勝を目指す今後のペナントレース、その先のプレーオフで、聖澤には惚れ惚れするスピードボール撃ちを1打席でも多く披露してもらいたい。
(成績は8月21日現在)
文=柴川友次
NHK大河ドラマ「真田丸」で盛り上がった信州上田に在住。郷里の英雄・真田幸村の赤備えがクリムゾンレッドにみえる、楽天推しの野球ブロガー。開幕前から楽天有利、ホークス不利の前半戦日程を指摘、イーグルス躍進の可能性を見抜いた。