5月27、28日の結果でベスト4が決まった春季近畿大会。ベスト4のうち3席をなんと大阪勢が持っていった。
勝ち残った大阪勢は、センバツ王者の大阪桐蔭(大阪1位)、春季大阪府大会決勝で大阪桐蔭と接戦を演じた大体大浪商(大阪2位)、センバツ準Vの履正社を破った東海大仰星(大阪3位)。いずれも強豪なだけに、ベスト4が大阪勢の寡占状態になるのも致し方ない気がする。
大阪勢のハイレベルな争いは群雄割拠の戦国時代を思わせるが、大阪から夏の甲子園に出場できるのはもちろん1校のみ。東京や北海道のように出場枠を増やせないものか……。
大阪勢が席巻している春季近畿大会。ベスト4の残り1席をつかみ取ったのは彦根東(滋賀1位)だ。
彦根東は滋賀県有数の進学校であり、エースの増居翔太(2年)は京都大進学を目指す秀才。1回戦では、徹底的に厳しいコースを突く冷静、かつクレバーな投球で龍谷大平安(京都1位)打線を2安打2失点に抑え、3対2でゲームをものにした。
次なる相手は大阪桐蔭。当代きってのキレ者左腕が王者をどこまで脅かせるか。ここで好勝負に持ち込み自信を深めるようなら、2013年以来となる夏の甲子園出場も見えてくる。
ここからは北海道、東北のニュースを。北海道では、春季北海道大会への出場をかけた支部大会が開催されていた。十勝支部大会は帯広大谷が制した。
十勝支部は秋季大会を含めて、白樺学園が10季連続で北海道大会の代表になっていたが、今回は2013年に北北海道代表として甲子園に出場した実績を持つ帯広大谷が、白樺学園にリベンジを果たした。
ちなみに2013年の甲子園出場時は白樺学園を下しての勝ち上がりではなかった。それだけに今春、後陣を拝していたライバルを破った感慨はひとしおだろう。
春季青森県大会は、青森山田が八戸工大一を4対2で下して決勝進出と東北大会出場を決めた。
昨年春の県大会、青森山田は八戸工大一に敗戦。しかも、その試合でエース・三上世視滝(せしる)の腰痛が悪化し離脱。そんな因縁の相手だった。
八戸工大一のエース・古屋敷匠真(3年)はプロ注目の逸材。夏の戦いの前にお返しをしておきたいところだったが、見事に雪辱を果たした。
「やられたらやり返す」「借りは早いうちに返す」。そんな意地が聞こえてきそうな白星だ。
なお青森山田は決勝で弘前学院聖愛を3対2の接戦で下し、4年ぶり10回目の優勝を決めた。
“わんこそば打線”で甲子園を湧かせた盛岡大付が、春季岩手県大会の準決勝で大谷翔平(日本ハム)や菊池雄星(西武)を輩出した花巻東と激突。
岩手の高校野球界をリードする2チームの対戦は接戦となったが、3対2でライバルを振り切った盛岡大付に勝利の女神が微笑んだ。
勢いに乗った盛岡大付は久慈との決勝戦を13対2で圧勝。秋季東北大会でも打線爆発なるか注目だ。
東北(宮城)でダルビッシュ有(レンジャーズ)とともに甲子園を戦ったサイドハンドの好投手のことを覚えているだろうか。
真壁賢守。トレードマークのメガネから「メガネッシュ」の相性で人気を博した真壁は、東北の2枚看板としてダルビッシュとともに甲子園で活躍。ときに、成長痛に苦しむダルビッシュをリリーフしチームを救った。
今春、東北に真壁の2代目とも呼べる投手が現れたことが話題を呼んでいる。その投手は古川原将真(2年)。もちろんメガネをかけている。
古川原は春季宮城県大会の準決勝・古川工戦に登板すると、相手打線を3安打14奪三振に切って取り完封。チームの決勝進出と東北大会出場の原動力となった。
今は背番号18。エース・葛岡仁を支える立場だが、夏を超えたら最上級生。主役になる日も遠くない。
以前、元巨人の選手・原俊介監督が率いる東海大静岡翔洋が今春、悲願の静岡県制覇を成し遂げたニュースをお知らせした。
その東海大静岡翔洋は晴れて春季東海大会に挑んだが、昨夏の甲子園出場校の東邦に8対0と7回コールド負けを喫した。
しかし、高いレベルで戦えたことは必ずや夏への糧になる。同姓の原辰徳元巨人監督がよく口にした、「(気持ちを)切り替えて」の精神で、夏も静岡の頂点に立ち、甲子園切符をつかみたい。
今回は大阪、北海道、東北、静岡をぐるりと巡ったが、気になるニュースはあっただろうか。筆者が気になったのは、近畿大会のベスト4の顔ぶれに、大阪勢の層の厚さが現れていたこと。
「大阪桐蔭を倒さなければ甲子園に出場できない」というのが大阪高校球界の現実だが、全国的にはもう「大阪を制すものが甲子園を制す」と言ってもいいのではないかという思いにかられた。
これからの高校野球のキーワードは「ストップ・ザ・大阪」か? この春の様相に筆者の高校野球観を変えられた気がしている……。
文=森田真悟(もりた・しんご)